メンバーが「疲弊しているチーム」を 「輝いているチーム」に変えるには？　～ホスピタリティチームの作り方～

■メンバーが「疲弊しているチーム」を「輝いているチーム」に変えるには？

「先生、こんな研修をやっても無駄だと思います」

　私が起業して間もない頃のことです。

　あるサービスエリアの支配人から、こんな研修依頼がありました。

「うちのスタッフは、とにかく笑顔が無いし、気遣いも足りないから、船坂さんの力でホ
スピタリティを教育してください」

　私は快諾し、研修当日は現場で働くスタッフたちと、

「もっと、笑顔でお客様をお迎えするにはどうしたらいいのだろうか？」

「どうしたら、お客様にまた来たいと思われるサービスを提供できるだろうか？」

　といったことを話し合っていました。

　そんなときでした。ある年配女性スタッフが突然手を挙げ、みんなの前でこう発言した
のです。

「先生、こんな研修をやっても無駄だと思います」

　私はとっさに「それは、なぜですか？」と質問しました。すると、

「社内の人間関係が悪いのに、お客様に心からの笑顔なんかできるわけがありません。私
たちにこんな研修をするより、まず上司に研修をしてください」

　と言われたのです。

　正直ショックでした……。

　それ以来、企業にうかがって研修やコンサルティングをする際に、チェックするポイン
トが変わりました。

その企業が「お客様にどんなサービスをしているか」以上に、

「スタッフがイキイキ働けているか」

「心からの笑顔をお客様に提供できる環境かどうか」

といったスタッフや組織の状況をより注意深く観察するようになったのです。

■良いサービスを提供したければ、良い職場にすること

すると、組織は大きくふたつのタイプに分かれることが見えてきました。

ひとつは、全員がお客様のほうを向いて目標に向かって一丸となり、スタッフ同士の尊
重や思いやりに溢れ、メンバーがキラキラ輝く「ホスピタリティチーム」。

そしてもうひとつは、全員がお客様のほうを向かずに社内や上司のほうを向いていて、
お互いの批判ばかりをして消耗戦を繰り広げている「疲弊するチーム」です。

また、業績も明らかに「ホスピタリティチーム」のほうが良く、「疲弊するチーム」の
ほうが悪いという傾向も、はっきり見えてきました。

このことから分かるのは、お客様に良い接客サービスを提供して、業績を上げたいので
あれば、まずは社内や職場がうまくいっていないとだめだということです。

現代は、成熟化が進み、お客様の接客サービスに対する期待値が上がっている時代です。

そんな中で、私たち接客・サービス業に求められているのは、スタッフの上辺ではない、

心のこもった主体的な接客サービスです。それがお客様へのサービス品質、顧客満足度、

リピート率、生産性、業績などの向上に繫がっていくのは言うまでもないでしょう。

そうしたサービスを実現するためには、上司部下、先輩後輩関係なく、職場のメンバー同士がお互いを思いやり、

認め合いながら、目的・目標に向かってひとつになること。

そしてお互いを生かし、一人ひとりが輝く組織を作ることが重要であり、それがすべての結果を導く最強のマネジメントなのです。

■リーダーの思考や行動が少し変わるだけで、組織は劇的に変わる

もしも今、あなたの組織が「疲弊しているチーム」であったとしても悲観する必要はありません。

私から見ると、接客・サービス業で働く人たちは基本的に人が好きな人たちで、一人ひとりはみんないい人たちばかりです。

そして、その人なりに一生懸命仕事をしていて、

「お客様に喜んでもらいたい」

「自分の働くこの会社をもっと良くしたい」

という想いはみんな持っています。

しかし、メンバー同士のちょっとした思い違いや理解不足、コミュニケーション不足で関係性が構築できていなかったり、

個々の能力が十分に発揮できていない組織環境に、結果的になってしまっているのが現状です。

つまり、本来は「ホスピタリティチーム」であるはずのチームが「疲弊するチーム」になってしまっている惜しい組織ばかりなのです。

その明暗を分けているのは、やはり組織の中で最も影響力の大きいリーダーの存在です。

リーダーが普段、どのような思考と行動でメンバーに関わり、向き合っているか。

これによって組織は「ホスピタリティチーム」にも「疲弊するチーム」にも成り得ます。

逆に言えば、リーダー自身の普段の思考と行動をちょっと変えるだけで、劇的に組織は変わることができるのです。

人間と同様、組織も成長します。現状に満足することなく、あなたの思考と行動を変えて、

今の組織をひとつ上のステージに進化させていきましょう！

※本コラムは、著書「接客サービス業のリーダーにとって一番大切なこと」（PHP研究所）の本編を再編集して掲載させて

いただいております。

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