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2021.08.15

マネジメントコラム

部下を思うように動かすリーダーの思考習慣

■部下が思うように動かないのは、部下の心のコップの向きが原因

「部下が自分の言うことを聞かない」

「指示したことをやらない」

 こんなことを悩んでいるリーダーも多いと思います。

 私がホテルマンを卒業し、ホスピタリティ・コンサルタントとして初めて仕事をいただ
いたホテルでの出来事です。

 そのホテルの社長から、「最近、スタッフの入れ替わりなどからサービス品質が下が
り、それに伴いお客様からの口コミ評価も業績も下がっている」と相談を受けました。

 その後私からの提案で、1年間でサービス品質を上げて業績向上を目指すプロジェクト

を立ち上げることが決まり、私がサポートさせていただくことになりました。

 したがって、私のミッションはホテルの「サービス品質向上」と「業績向上」です。

 そのミッションを遂行すべく、早速、現場を見てみると、「スタッフの笑顔」からはじ
まり「館内のクリンネス」「接客応対」など、改善すべき課題がたくさん見つかりました。
 私は、それをすぐに現場にフィードバックし、改善を促しました。

 しかし、いっこうに改善される気配がありません。

 私は語気を荒げて「社長からの指示で実施しているプロジェクトなのに、なぜ改善しな
いんですか!」とメンバーに訴えました。

 メンバーからは、「人がいない」「時間が無い」といったできない言い訳ばかり……。

 それを受けて当時の私は、「スタッフたちのこの取り組みに対するやる気のなさ」を問
題にして社長に訴えました。

しかし、すぐにそれは私の間違いであることに気づきました。

 なぜメンバーが動かなかったか。

それは、「メンバーの心のコップが上向きになっていなかった」からです。

今思うと、社長が連れてきたコンサルタントからいきなり

「ああしろ、こうしろ」と上から言われても、現場が受け入れがたいと思うのも無理はありません。

つまりメンバーは、私に対しての「心のコップが伏せられた状態」であり、私がどんな
に正しいことを言っても、メンバーの心の中には何も入っていかない状態だったのです。

 

■自分にとって正しいことが効果的なマネジメントとは限らない

 このことから私は、「自分にとって正しいことだからといって、メンバーをマネジメン
トする上で効果的であるとは限らない」ということを学びました。

 それから私は仕切り直して、メンバー一人ひとりの想いに耳を傾け、これまでの苦労を
ねぎらい、そして彼らのやりたいことを尊重するようにしました。

そうしたところ、「メンバーの心のコップが少しずつ上向き」になり、私の言うことを受け入れるようになったのです。

それに伴い現場改善が進み、成果に結びついていきました。

 こうしたことはこの後も行く先々で起きました。

外部のコンサルタントに対して、心のコップが最初から上向きであることなどまずないからです。

ですから、いつも私は、自分の正しいことはいったん脇に置いておいて、まずはメンバーの想いを知り、関係性を作りながら、心のコップを上に向けることを優先するようにしています。

自分が正しいことを言っているのに部下が動いてくれない……。

これは、多くの現場リーダーも日々経験していることでしょう。

 ある不動産店舗の店長は、異動で他店舗の店長に配属された際、最初からその店舗のダ
メなところばかりを指摘してしまったといいます。

その結果、既存の店舗メンバーの心のコップが上向きになるまでにかなりの時間を要することになり、自分のやりたいことができるようになるまで遠回りをしてしまった、と言っていました。
 

リーダーは、責任感や正義感から、自分が正しいと思ったことをつい部下に押し付けが
ちです。

しかし、それが組織を束ねて目標達成を導く効果的なマネジメントになるとは限りません。

まずは部下の心のコップを上に向け、部下があなたの意見を受け入れられるようにすることが、部下の力を引き出す上で重要であり、それが結果的に成果に結びつくマネジメントへの近道となります。

 

※本コラムは、著書「接客・サービス業のリーダーにとって一番大切なこと」(PHP研究所)の本編を再編集して掲載させていただいております。

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