2022.07.23
マネジメントコラム
ホスピタリティの高い企業は、なぜ企業理念を大切にするのか? ~ディズニー、スターバックスも実践するミッションマネジメントが効果的な5つの理由~
企業で掲げている企業理念。
ミッションや社是など言い方は違えど、何かしら存在している企業が多いのではないでしょうか?
それでは、企業理念が社内の従業員一人ひとりに浸透して、それに伴った思考や行動が社風や文化になっているか?
ということに関しては、なかなかうまくいっていない企業が多い印象です。
少し前のデータになりますが、
2013年にHR総合調査研究所が上場および未上場企業の人事担当者117社を対象にした
企業理念浸透に関するアンケートによると、
『企業理念の浸透が必要性』に関しては、
必要だと思うと答えた企業が85%に対して、
『企業理念が浸透しているか』に関しては、
浸透していると答えた企業はわずか6%でした。
このように、企業理念の浸透の必要性は感じていても浸透していないというのが現実のようです。
一方で、ホスピタリティの高いサービスを提供している企業と言えば、
ディズニーやホテルリッツカールトン、スターバックスコーヒーを思い浮かべます。
これらの企業の共通点は、ミッションマネジメントに力を入れているということです。
このミッションマネジメントとは、
『ミッション(経営理念)を組織の隅々まで浸透させ、それをスタッフのやる気や組織の発展に繋げ、
ミッションを体現化するマネジメント』
を意味します。
特にサービス業は、これからの時代の労働人口の減少、少数精鋭を軸に考える際に、
人による労働生産性が高いという観点からも、従業員のやる気を高めて、生産性を向上させる
ミッションマネジメントは大きな意味を持ちます。
それでは、ここからは、具体的にミッションマネジメントがもたらす5つの効果を解説させていただきます。
1.従業員の仕事の「やりがい」や「誇り」の醸成
企業理念は、その企業が社会に対してどのような価値を提供するかが明文化されています。
ただ単に給料をもらう為に働くのではなく、自分の仕事がどのように社会に貢献できるのか、
自分の仕事がお客様にとってどのような価値があるのかが企業理念によって明確になります。
これによって自分のこの仕事に対する「やりがい」や「誇り」、「存在意義」を自己承認することができます。
2.社内の不毛な争いの回避
「営業部門は販売促進費をかけて集客をしたい!」
「経理部門は、そんなに販売促進に経費をかけるべきではない!」
これらのお互いの正義の主張による衝突は日々、現場で起きています。
これらは、売上を上げる為、経費を削減して利益を確保する為、
両者の主張はどちらも正しい主張です。
このような時に正しい判断のモノサシとして経営理念が役立ちます。
私がホテルの婚礼支配人時代に、宿泊支配人と揉めたことがありました。
私は、婚礼で遠方から来られたゲストをホテルに安く泊めてあげたい。
宿泊支配人は、婚礼ゲストに安く客室を提供してしまうと客室単価が下がってしまうので、
一般のお客様に売りたい。
お互いの正義は平行線でした。
その時に、経営理念の中に「ホテル全体の成果や利益を最大の目的とする」という項目が
あることを思い出しました。
このモノサシでこの事案を測った時に、ホテル全体では婚礼を受注してホテル全体の売上、利益を最大化すべき、
という合意が宿泊支配人とできたことを記憶しています。
このように何か社内で衝突ができた際にも、企業理念に照らし合わせるとお互いが納得感のある解決や意思決定が
できるようになります。
3.競合他社との差別化・独自性
ハードや商品での差別化が困難な時代に、接客やサービスで差別化することは益々重要な要素となり、
その上で、自社の考え方や価値観であるミッションを接客・サービスに落とし込むことで、
他社との差別化、独自性を確立することに繋がります。
さて、突然ですが、
「人々の心を豊かで活力あるものにするためにひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティーから」
この企業理念は、ある企業の企業理念です。
どこの会社の企業理念か分かりますか?
そうです。
スターバックスコーヒーの企業理念です。
見て分かるように、スターバックスは「美味しいコーヒーを提供するため」に仕事をしていません。
「お客様の心を満たす為」に仕事をしています。
だからこそ、
・一人ひとりのお客様と積極的なコミュニケーションを取る
・カップにイラストやメッセージを書いてお客様を喜ばせる
・スタッフ誰もが笑顔で心地良い時間を提供する
といった、この企業理念だからこそ、スターバックスならではのサービスが提供されているのです。
逆に言えば、あなたの会社の企業理念をお客様が耳にした時に、スターバックスのように、
お客様はあなたの会社のことを思い浮かべてもらえますでしょうか?
このことからも、自社の企業理念と接客・サービスのマッチングがブランド力の最大化にも繋がります。
企業理念の浸透は、他社が真似できない唯一無二の独自性、圧倒的な差別化に繋がります。
4.定型型サービスではなく適応型サービスに順応
時代は、マニュアル通りの誰にでも同じサービスを提供する「定型型サービス」から、
それぞれのお客様のニーズを汲み取り、個別に応えていく「適応型サービス」の時代に移り変わっています。
逆に言えばマニュアル通りの定型型サービスは、これからの時代はAIやロボットが担当し、
「人」による接客サービスで求められるのは、適応型サービスのレベルアップです。
その上で、言われたことを、マニュアル通りにやっていれば良いという時代は終わり、
マニュアルの上位概念である、企業理念を各スタッフがどのように捉えて、
どのように、個々のお客様に合わせて提供していくかが求められます。
その為にも「ただ単にお客様に喜んでいただければ、マニュアルを越えて何でもやって良い」ではなく、
企業理念の中の大切な価値観、
例えば、
「感動」という価値観が企業理念であれば、お客様の心を動かすような接客サービスの提供が必要になりますし、
「真心」という価値観であれば、おもてなしの心が伝わる、お客様が自分のことを愛されていると感じられるような
接客サービスの提供が必要、
「我が家のような」という価値観であれば、自分の家のように寛げる時間を接客サービスで提供することになります。
このように、その会社の企業理念によって、提供する適応型サービスは変わるのです。
5.スタッフのパワーの最大化に繋がる
「良いサービスをしよう!」
「お客様を満足させよう!」
「お客様のニーズを満たそう!」
このような目標設定で、スタッフ達は本当に心からお客様を喜んでいただこうと頑張るでしょうか?
2011年女子サッカーなでしこジャパンは、ワールドカップで世界で3位に入れれば・・・、
という予想を覆し優勝を遂げました。
何故、なでしこジャパンは優勝できたのか?
ワールドカップに臨む前にキャプテンの澤穗希選手はインタビューでこう答えています。
「ワールドカップで優勝して、被災者や国民の皆さんに勇気と元気を与えたい!」
同じ年の3月に東北大震災がありワールドカップは同じ年の6月に行なわれています。
恐らく、私は「ワールドカップに優勝する!」という目標設定だったら優勝できなかったと思います。
「被災者や国民の皆さんに勇気と元気を与えたい」というミッション、理念があったからこそ、
選手達は実力以上の力を発揮でき、優勝をたぐり寄せることができたのだと思うのです。
このことからも分かるように、ミッションの中にあるメッセージは人の心を動かし、
スタッフの内発的動機を引き出し、各スタッフの持つ力を最大化する威力があります。
いかがでしたでしょうか?
皆さまの会社では、企業理念がどれだけ全スタッフの血となり肉となり、社風、文化になって、
社内の問題解決や意思決定、お客様へのサービスの提供に寄与しているでしょうか?
ザ・ホスピタリティチーム(株)では、このような企業理念に関する策定・浸透のご相談も承っておりますので、
お気軽にご相談ください。
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