ホスピタリティは、一般的には「おもてなし」「思いやり」「気遣い」といった意味で
解釈されているケースが多いのですが、
日本ホスピタリティ推進協会の定義では、
「相互満足しうる対等になるに相応しい相関関係を築く為の人道」
とあります。
この定義を簡単に解説しますと、
相互満足・・・自分だけではなく、相手も満足すること。
対等・・・自分と相手の両者間において、どちらが上でも下でもなく対等な関係であること。
そのようなお互いの関係性を築くための人としての倫理であり人道である。
となります。
つまり、自分が相手に「おもてなし」や「気遣い」を通じて貢献すること、尽すことで、
相手に喜んでいただき満足に繋がる。
その相手の喜びの笑顔や感謝の言葉が自分に投げかけられることで、
自分の喜びや承認となり、相互満足となる。
そして両者の関係性は、どちらのほうが立場が「上」とか「下」といった主従関係はなく、
お互いを尊重する人と人としての対等な関係である。
ということになります。
ここで注目していただきたいのは、ホスピタリティは「サービスを提供するスタッフと提供される顧客」
といった顧客サービスのみに活用されるものではなく、「人間関係全てに介在する」ということです。
ホスピタリティは大きく分けて3つに分類されます。
◆ インナー・ホスピタリティ(社内)
インナー・ホスピタリティとは、社内の従業員同士のホスピタリティを意味します。
ホスピタリティといえば、顧客への「おもてなし」や「厚遇」をイメージしがちだが、高いホスピタリティを提供するには、
それ以前に社内のスタッフ同士の尊重や思いやりが重要であり、
「社内がギスギスしたムードで、顧客に対して心からの笑顔や高いホスピタリティの提供は無い」ことが示すように、
まずは社内のホスピタリティを高めることが重要です。
◆ カスタマー・ホスピタリティ(顧客)
カスタマー・ホスピタリティとは、顧客への「おもてなし」や「厚遇」をベースとしたサービスの提供を意味します。
顧客に対して接客・サービスを通じて、顧客からの期待通りの満足領域を超える、
感動領域のホスピタリティを提供することが、顧客ロイヤリティを高め、自社・自店舗のファンとなり、
リピート化に繋がります。
◆ ソーシャル・ホスピタリティ(社会)
ソーシャル・ホスピタリティとは、社会に対するホスピタリティを意味します。
コンプライアンスの遵守、自然破壊撲滅や環境への配慮といった持続可能な社会の創造も、
社会に対するホスピタリティであり、自社の社会への貢献のあり方を示した企業理念の実現も、
社会へのホスピタリティとなります。
このように、ホスピタリティは顧客のみに提供させるものではなく、社内の従業員同士のホスピタリティが重要であり、
むしろ職場内、従業員同士にお互いのホスピタリティが無ければ、顧客に心からのホスピタリティが提供されないと
いうのは容易に想像できます。
それでは、どのようにホスピタリティを活用すれば、組織運営における成果を生むことができるのでしょうか?
それには、「ホスピタリティによる好循環サイクル」を理解することが大切です。
こちらの図は、ホスピタリティの考え方を従業員の基本的思考として職場内の共通価値とすることで、
様々な成果に繋がることを示す成功循環サイクルです。

①ホスピタリティ思考
職場で働く全メンバーに対して、ホスピタリティを組織内の共通価値として共有する。
インナー:メンバー同士の尊重、承認、思いやり、気遣いにより、組織内の心理的安全性が担保されて関係の質が高まる。
カスタマー:お客様を思いやり、気遣う、もてなすことを主体的に考えるようになる。
②相互貢献意欲の向上
ホスピタリティが組織内の共通価値となり全メンバーに浸透することで、組織内のお互いの貢献意識が高まる。
インナー:組織内の関係性が高まることで、お互いの助け合いの精神、貢献意欲が高まる。
カスタマー:社内の人間関係によるストレスが無く顧客志向が高まり、心からの笑顔で純粋にお客様に貢献する意欲が高まる。
③自律的行動
貢献による喜びから、本来の仕事の目的である「他者の喜びやしあわせへの貢献」に沿った仕事をするようになる。
インナー:「他者に貢献して喜んでいただくことが、自分の喜びに繋がる」ことを実感して、内発的動機付けに繋がり、
自分の「あり方・パーパス」に従って仕事をするようになる。
カスタマー:貢献意欲の高い、イキイキと輝くスタッフからサービスを提供され、顧客満足度、顧客幸福度が上がる。
④相互歓喜・互酬性
メンバーの仕事の本質に沿った自律的な行動により、仕事の「やりがい」や「誇り」が高まり様々な成果に繋がる。
インナー:メンバー同士がお互いを尊重して協力し合い、目的・目標に向かって一丸となり、組織の一体感が高まり喜びに溢れる。
カスタマー:スタッフもお客様も笑顔に溢れ、「また来たい!」「またあなたに会いたい!」といった顧客ロイヤリティに繋がる。
このようなサイクルの実現化により、
★生産性の向上
★顧客満足度向上
★従業員満足度向上
★エンゲージメント向上
★定着率向上
★顧客リピート率向上
★売上、利益向上
といった様々な成果に繋がります。
これを見てお分かりいただけるように、成功の循環サイクルの出発点は、
「組織内のメンバーに対するホスピタリティ思考の浸透」であり、
ここが成功の鍵を握っています。
グーグルの全世界のマネージャーへの調査で、
「生産性の高い組織運営をする上で一番大切なことは」に対して、
組織運営で一番大切なのは「組織内の心理的安全性」という調査結果が出ました。
つまり、チームの効果性に最も重要なのは「チームメンバーの構成」よりも
「チームがどのように協力しているか」が重要である。
ということです。
いくら良い商品があっても、素晴らしい戦略・戦術を立案できても、
組織内にホスピタリティが溢れていて心理的安全性が担保されていること、
そこで働くメンバーがお互いを尊重し、承認し、思いやり、協力し合いながら仕事をしているかどうかが、
結局は、結果、成果に結びつくかを決めているということを意味します。
売上、利益だけ上げればそれでいいという企業運営の時代は終わり、
企業には、顧客、従業員の幸福の実現が求められます。
顧客も、従業員も輝くためにホスピタリティの考え方を組織運営に活用することは、
これからの企業運営に大きな意味を持つでしょう。
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