■ 数字を伸ばす最速レバーは「安心感」だった
グーグルが4年を費やした プロジェクト・アリストテレスは、全世界の約180チームに対して、
「チームを高業績に導くうえで、最も重要だと考える要素は何か?」を追求したプロジェクト。
その結果は、
「成果を分ける最大要因はチームメンバーの顔ぶれでも報酬制度でもなく、心理的安全性だ。」
と結論づけました。
これは、メンバーは「他のメンバーに対して対人関係の不安や不満」を感じない。
自分も過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分をバカにしたり否定したりしないと確信できることを意味します。
つまり「命令を行き渡らせること」よりも「安心して考えを口にできること」が、いまや最も再現性の高い生産性向上の手段なのです。
■心理的安全性を阻害する要因
メンバーは会議や日常のやり取りの中で、つねに“ここで話して大丈夫か”を常に「様子見」をしています。
とくにリーダーの一言ひとことは“評価シグナル”として強力に作用し、たった数秒で心のシャッターを下ろさせます。
その主な引き金になるのが、次の4種類のレッテルです。
- 無知だと思われる恐れ──「こんな事も分からないのか?」
- 無能だと思われる恐れ──「こんな簡単なこともできないのか?」
- 否定的だと思われる恐れ──建設的な提案なのに「君は批判的だね」
- 邪魔者だと思われる恐れ──改善案を出しただけで「和を乱すな」
これらの評価がちらつく瞬間、メンバーは発言を控え、ミスを隠し、提案を胸の内にしまい込みます。
したがって、リーダーがまずすべきは、問い掛け・感謝・称賛で“レッテルの危険信号”を打ち消し、安心して意見を出せる空気をつくることなのです。
■心理的安全性の高い組織は「ぬるい組織」ではない
心理的安全性が高い職場というのは、「何でも言い合える=仲良しこよし」の場ではありません。
むしろ、率直な指摘や異論が飛び交っても関係が揺らがない──そんな“強い関係の質”を備えたチームを指します。
その土台にあるのは、互いの意見・立場・感情を尊重し、挑戦や失敗を承認し合うホスピタリティの文化です。
つまり、優しいだけでなく厳しい意見も歓迎できる“温かくてタフ”な関係性こそが、心理的安全性の本質なのです。
この心理的安全性と組織風土の関係性を説いたのが、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授です。
教授は、心理的安全性(関係の質)を縦軸に、目標達成意識・使命感を横軸に取り、組織を四象限で整理しました。
〇機能不全な組織〈停滞ゾーン〉
ここは“空気は穏やか、だが無風”の世界です。
会議では誰も手を挙げず、決まり文句は「前例どおりで」。
ミスを犯しても責められない反面、誰も新しいことに手を出さず、学習サイクルはゼロ—静かなまま時だけが過ぎていきます。
長く居れば居るほど、メンバーの好奇心と市場のスピードが乖離し、チームはゆっくりと沈んでいきます。
〇冷たい組織〈消耗ゾーン〉
ここでは評価ポイントや金銭的インセンティブ、そして「ミスは許さない」という罰への恐れ、外発的なコントロールだけが原動力になっています。
数字の達成は義務であり、メンバーは「失点を避けるための自己犠牲」に走りがちです。短期的には成果が出ても、失敗は共有されず学習も生まれないため、
同じ落とし穴に何度も落ち、やがて疲弊と離職を招く“焼き畑農業”の状態に陥ります。
〇ぬるい組織〈ぬるま湯ゾーン〉
メンバー同士の仲は良好で、雑談も絶えません。
けれど合言葉は「無理せずほどほどに」。批判も衝突も起こらない代わりに、刺激と成長もありません。
快適な温度に慣れたチームは、やがて外の気流が読めなくなり、市場変化に出遅れる“温室植物”になります。
〇学習・成長する組織〈成長ゾーン〉
目指すのはこの「学習・成長する組織」です。
ここでは「やってみよう、学ぼう」が合言葉です。挑戦を称賛し、失敗は次の学びに変える文化が根づいています。
衝突はあっても人格攻撃には決して至らず、問題は“チームの共通項”として扱われます。
安全性で耕された土壌に、挑戦という養分を絶えず注ぐ、その循環がイノベーションと高成果を最速で育むのです。
■職場の心理的安全性をセルフ診断する
それでは、あなたのチームがどれだけ「安心して挑戦できる土壌」を備えているか、次の七つの問いに当てはまるものにチェックをしてください。
□失敗を責められずに済むか
小さなミスを正直に認めても、人格を否定されることなく次の改善へ話が進む。
□意見を遠慮なく言えるか
役職や年齢を問わず、「こうした方がいい」と感じたことをそのまま口にできる空気がある。
□リスクを取ることが奨励されているか
未知の方法に挑戦してもうまくいかなかったとき、「やってみたこと自体が価値だ」と肯定される。
□助けを気軽に求められるか
手が足りないときや知識が不足するとき、ためらわずに “助けてほしい” と声を上げられる。
□仕事を否定・軽蔑されないか
業務の進め方や成果に対する指摘は、人格や能力を否定するものではなく、改善や成長を促すための建設的なものになっている。
□異質な考え方を歓迎できるか
上司、部下や先輩、後輩、専門領域が違う人の発言に対して、自然に耳を傾けてもらえる文化がある。
□才能と経験が尊重されているか
メンバーの強みや過去の経験が「価値のある資源」として扱われ、活かされている。
“はい” が 、
0〜2個…まずは承認の習慣づくりから手を付けましょう。
3〜5個…改善余地十分、成長ゾーンへの引き上げを図りましょう。
6〜7個…挑戦をさらに後押しする仕組みを整えれば、チームは一段と飛躍できるはず。
■心理的安全性を高めるためにリーダーとして心掛けること
心理的安全性の高い職場にするために、影響の輪が大きいリーダーであるあなたが、次の行動を心掛けることで心理的安全性が高まります。
〇直接声を掛けられる“親しみやすい窓口”になる
ちょっとした挨拶・雑談を意図的に増やし、「いつでも話しかけていい人」という看板を掲げましょう。
相談やアイデアが最短距離でリーダーに届くルートがあるだけで、チームの安心感は大きく変わります。
〇自分の知識の限界をあえて宣言する
「ここは私も詳しくない。教えて欲しい」と言える上司は、部下の探究心を解放します。
完璧さを手放し“学びの余白”を示すことで、質問や異論が歓迎される土壌が整います。
〇自らのミスを先に開示し、笑顔で共有する
打ち合わせや朝礼で「これは私の失敗談だけれど…」と先にさらけ出すと、メンバーも安心して自分のつまずきを語れます。
リーダーの弱さの開示は、挑戦と学習を回す最も手軽で効果的な方法です。
〇発言機会をデザインし、全員の参加を促す
意思決定に入る前に「全員からひと言ずつ」を回す、付箋でまず“書いて”から全員参加で口頭共有する・
こうした仕掛けを用意してこそ、多様な視点がテーブルに並びます。
発言の機会をデザインすることは、メンバーの能力を引き出すリーダーの責任です。
〇「失敗は学習の機会だ」と言葉と仕組みで刻む
失敗のたびに「ダメ出し」や評価ダウンが待っている職場では、誰も新しい一歩を踏み出せません。
チャレンジと失敗を成長のチャンスに変える空気をつくること。
それこそがリーダーであるあなたの最重要ミッションです。
これら五つの行動を日常に織り込むたび、チームは、「批判されるから静かにしている」段階を抜け出し、
「挑戦しても守られているから思いきり動ける」成長ゾーンへとシフトしていきます。
心理的安全性は、制度やマニュアルが運んでくるものではありません。
人間関係に不安や不満を感じさせない職場をつくるために、互いを尊重し承認し合うホスピタリティあふれる行動を推奨すること、
それこそが、生産性の高い“成長する組織”への第一歩です。
ザ・ホスピタリティチームでは、心理的安全性向上、組織づくり、チームビルティング、ホスピタリティに関する研修、
コンサルティングのサービスを提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
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