■ プレーヤーの限界
リーダーシップを発揮する上で大切なことがあります。
それは、プレーヤーからマネージャーへの転換です。
現場リーダーの多くはプレイングマネージャーであり、プレーヤーとマネージャーを兼任しているケースが殆どです。
しかも昨今の人手不足で、その傾向はさらに顕著になっています。
リーダーが最前線で顧客対応や売上づくりを牽引する姿は、短期的にはチームを鼓舞します。
しかし時間が経つにつれ、
ボトルネック化 ……仕事を増やすほど自分しか処理できないタスクが積み上がる。
学習の属人化 ……成功ノウハウが個人にとどまり、仕組みに昇華されない。
挑戦機会の喪失 ……部下は「手伝い要員」になり、自発性が削がれる。
このような三つの壁が立ちはだかります。
組織全体の生産性を伸ばすには、リーダーが“自分の手で成果をつくる”段階から“場を整え成果を生ませる”段階へ意識を切り替える必要があります。
■プレーヤーとマネージャーの違い
それでは、プレーヤーとマネージャーでは何が違うのでしょうか?
【プレーヤーの役割と価値】
《役割:Doing》
①自分の成果に集中する
プレーヤーは、自分のスキルや知識を活かして、目の前の業務を高い精度で遂行します。
結果として、個人の成果がチームや組織に貢献します。
② 専門性を磨く
プレーヤーは、自らの専門性や業務スキルを高め続けることで、チーム全体の基盤を強化します。
優れた専門家がチームにいることで、信頼や質の高い成果が得られます。
《価値:Impact》
①専門スキルの発揮
プレーヤーは、特定の分野やタスクにおいて高い成果を出すことで、組織に直接的な利益をもたらします。
この「専門性」は、チーム全体の力を補強する基盤となります。
②ロールモデルとなる
高い専門性や成果を示すプレーヤーは、他のメンバーの模範となり、チーム全体に良い影響を与えます。
【マネージャーの役割と価値】
《役割:Doing》
①メンバーの力を引き出す
マネージャーの本質は、自分の成果を出すだけではなく、メンバー全員の力を引き上げることです。
②影響の輪を活用する
自分の直接的な働きだけではなく、メンバーを育て、動かし、組織全体の力を底上げする役割を担います。
これにより、より大きな目標を達成できます。
《価値:Impact》
①組織全体の成果を最大化する
自分一人の力ではなく、メンバー全員が力を発揮できる環境を作ることで、成果の規模を大きくします。
②未来への投資を行う
部下の育成やモチベーション向上に力を注ぐことで、長期的な組織の成長を支えます。
これらからも分かるように、プレーヤーが使うパワーの大半は“自分の成果”に注がれます。
一方マネージャーは全体が輝くよう“土壌”に力を注ぎ、相対的に自分の直接パワーを減らすことで、
チーム全体の総パワーを拡大させるという大きな違いがあるのです。
■背中を見せるだけでは組織は伸びない
ここでひとつ事例を紹介させていただくと、
私がホテルで婚礼支配人を務めていた頃、接客が大好きで得意だった私は、プレーヤーとして最前線に立つことが最良のリーダー像だと信じ込んでいました。
ところが現場からは「相談したくても支配人がいない」「忙しそうで声を掛けづらい」と不満が噴出し、私は孤立していきました。
転機は尊敬する先輩からの一言です。
「船坂さん、その立ち回りではあなたの価値が下がりますよ。
あなたが接客で幸せにできるのは年間せいぜい50組。
でも、部下15名が同じレベルでサービスを提供できたら、
50組 × 15名=750組 を幸せにできます。
支配人として会社や社会に提供できる価値はどちらが大きいですか?」
私はハッとしました。部下に負担を掛けまいと“良かれ”と思ってプレーヤーに徹していた行動は、
結果的にチームの成長機会を奪い、組織力を縮小させていたのです。
その日から私は接客数を意図的に減らし、部下育成と仕組みづくりに時間を投資しました。
数ヵ月後、メンバーが主役となって提案と改善を繰り返すチームに生まれ変わり、
当時年間8億円だった売上が翌年は16億円とわずか1年で《2倍》に伸びたのです。
■プレーヤーからマネージャーへシフトする核心――“権限移譲” を恐れない
プレーヤーからマネージャーへ移行する第一歩は、いま自分が握っている業務を手放す勇気です。
人手不足の現場では、
「任せられるメンバーがいない」
「部下に残業を強いるのでは」
といった不安がつきまといます。
しかし、現在のサービス業や小売業では パート・アルバイトこそ主力戦力になっています。
彼・彼女らに責任ある仕事を委ね、スキルアップの機会を提供することが、組織全体の生産性と定着率を引き上げる最短ルートです。
その鍵を握るのが “権限移譲” です。
具体的なシフト作成を部下に権限移譲することを事例として4つの条件を解説します。
①目的(Why)を先に語る。
「来月からピーク帯の接客品質をさらに上げたいので、〇〇さんにシフト作成をお願いしたいんだ。」
② 期待水準(What & How well)を数値で示す。
「各時間帯に正社員 2 人+パート 1 人を確保し、希望休は 90%以上通るよう組んでみてね。」
③ 期限(When)と途中確認のタイミングを伝える。
「ドラフトは来週金曜 17 時までに見せて。土曜の午前にフィードバックするから、最終版を月曜正午に掲示板へ貼ろう。」
④ 相談窓口(Who & How)を具体的に示す。
「一旦、来週火曜日の10時から進捗確認も含めてミーティングしよう。
それまでに何か迷ったり、困ったことがあれば声を掛けてね。
またサブリーダーの鈴木さんもフォローに入るから安心してくださいね。」
この4条件を揃えて渡すことで、部下は 「任されたうえで守られている」 と感じ、
自律的に動けるようになります。どれか一つでも欠けると不安が勝り、かえってリーダーへの依存が強まるので要注意です。
小さくても今すぐ任せられる業務をひとつ選び、4条件を添えて今日中に部下へ手渡してみてください。
第一歩は、その“手放す勇気”から始まります。
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