〈ホスピタリティ・リーダーシップの真髄〉
― 部下が自ら動きたくなる“関係の質”のつくり方 ―
最近の職場では、上司が部下との関わり方に、これまで以上に神経を使うようになっています。
ちょっとした言い回しや冗談のつもりの一言が、「それってパワハラですよ」「セクハラですよ」と指摘されるのが現状です。
半分冗談、半分本気のような空気感ではありますが、上司側にとっては決して軽く受け止められるものではありません。
その結果、「下手に関わらないほうが無難だ」「必要最低限の業務連絡だけにしておこう」と考える上司が増えているのも事実です。
確かに、関わらなければトラブルは起きにくい。しかし、そのような“波風の立たない職場”は、本当に健全なのでしょうか?
実際には、関係性が希薄になった組織ほど、部下は受け身になり、自ら考えなくなり、結果として生産性や成果を生みにくくなります。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」でも、組織の成果は、まず職場内の関係の質から始まるとされています。
関係の質が高まることで、メンバーの思考の質が前向きになり、自発的な行動が生まれ、
その結果として成果につながる。
つまり、心理的安全性を含めた職場の関係性こそが、成果の起点なのです。
それにもかかわらず、ハラスメントを恐れるあまり、上司が部下との関係の質を高める努力をやめてしまえば、組織は音もなく、
しかし確実に疲弊していくことになるでしょう。
それでは、どうすればよいのでしょうか?
そのヒントは、「上司が部下にどう向き合っているか」にあります。
多くの職場では、無意識のうちに、上司が部下を「自分より下の存在」として扱ってしまっています。
その関係性は、親と子どものような構図になりやすく、上司は世話を焼き、部下はそれに甘える。
すると、部下は自ら考える機会を失い、不満や不平を感情的にぶつけるようになる。
これが、上司への苦言やハラスメント指摘につながるケースも少なくありません。
一方で、あるホテルでは、ロビーやレストランで騒いでしまう子どもに対して、
あえて「子ども扱い」をしない、紳士として接しています。
それは「走っちゃダメ」と注意するのではなく、
「ここは多くのお客様がくつろぐ場所なので、皆さまが気持ちよく過ごせるように歩いてもらえますか?」と、
一人の紳士として丁寧に伝えています。
すると、子どもは叱られたのではなく、「自律した人間として扱われた」と受け取り、自ら行動を改めるようになったというエピソードもあります。
怒らず、甘やかさず、信頼して期待を伝える。
この関わり方が示しているのは、人は管理されることで自律するのではなく、信頼されることで自律するという事実です。
これは職場でも同じです。
上司が部下に対して、過度に馴れ馴れしく接するのでもなく、距離を取って突き放すのでもなく、
同じ企業で目的や目標に向かって協働する「同志」として向き合うこと。
その姿勢こそが、ハラスメントを防ぎ、部下の自律を育てる土台になるのです。
自律していない部下を、いきなり自律した大人として扱う必要はありません。
しかし、「いつか自律できる存在」として向き合わなければ、自律は一生育ちません。
ここで、上司と部下は対等だと言うと、「では、上司が部下を導く役割は不要なのか」と誤解されることがあります。
しかし、対等とは“責任が同じ”という意味ではありません。
上司と部下は、役割としては明確に異なります。
上司は、部下よりも多くの影響力と責任を持っています。
だからこそ、
一人の社会人として尊重し、関わり方としては誠実に向き合う必要があるのです。
■ハラスメントを撲滅するための、部下との向き合い方
それでは、上司は具体的に、どのように部下と向き合えばよいのでしょうか?
ハラスメントを防ごうとすると、「距離を取る」「関わらない」という選択をしてしまう上司がいます。
しかし本当に大切なのは、関係を切ることではなく、関係の持ち方を変えることです。
ここでは、主従関係に陥らず、部下を一人の社会人として尊重しながら関わるための、
3つの具体的なポイントを紹介します。
① 言葉づかいを「敬語にする」のではなく、「敬意をのせる」
言葉づかいを変えると距離ができるのでは、と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし問題なのは、敬語かどうかではなく、
相手をどう扱っているかが伝わるかどうかです。
慣れ慣れしい呼び方や命令口調は、無意識のうちに「上下」「主従」の関係を固定化してしまいます。
NG例
-
「〇〇ちゃん」
-
「これ、やっといて」
-
「何やってんの?」
OK例
-
「〇〇さん」
-
「これ、お願いしてもいい?」
-
「今、どんな状況?」
大切なのは、完璧な敬語に変えることではありません。
命令を依頼に、決めつけを問いかけに変えること。
それだけで、相手への尊重は十分に伝わります。
② 感情ではなく、「事実」と「期待」で話す
ハラスメントが生まれやすい場面の多くは、上司の感情がそのまま言葉に乗ってしまうときです。
NG例
-
「やる気あるの?」
-
「何度言わせるんだ」
これらは、行動ではなく人格に触れてしまう言い方です。
OK例
-
「この業務は、〇日までに終わる想定でした」
-
「次は、ここまで仕上げてもらえると助かります」
事実 → 期待の順で伝えることで、注意や指摘は「攻撃」ではなく、仕事としての対話になります。
これは、厳しさをなくすことではなく、誠実さに変えることに繋がります。
③ 決めつけず、「確認する姿勢」を持つ
上司が無意識にやってしまいがちなのが、「分かっているはず」「なぜできないんだ」という決めつけです。
NG例
-
「普通は分かるよね」
-
「前にも言ったよね?」
OK例
-
「どう受け取っていましたか?」
-
「どこで迷いましたか?」
-
「今、困っている点はありますか?」
問いかけに変えるだけで、
関係性は「責める側/責められる側」から、一緒に考える関係へと変わります。
これは、部下を甘やかすことではありません。
自律を育てるための、対等な関わり方です。
ハラスメントをなくすために必要なのは、距離を取ることではありません。
日々の言葉づかい、伝え方、問いかけ方を、相手を一人の社会人として尊重する形に変えること。
それが、主従関係から協働関係へと、組織を変えていく第一歩なのです。
ザ・ホスピタリティチーム㈱では、ハラスメント、心理的安全性、組織づくり、リーダーシップに関する、
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