「数字ではなく“ロマン”を語るリーダーが、部下の心を動かす」  ― 信念が、組織の軸をつくる ―

2025.08.15

「数字ではなく“ロマン”を語るリーダーが、部下の心を動かす」 ― 信念が、組織の軸をつくる ―

マネジメントコラム

 

■メンバーの心を動かすリーダーとは?

あなたは、どちらのリーダーについていきたいと思いますか?」

 

A:「今月の売上は未達だ。残業時間もオーバーしている。数字を達成しろ」

B:「お客様の笑顔や“ありがとう”の言葉があふれる時間を、みんなと一緒にもっとつくりたい」

 

どちらもリーダーの言葉です。数字も大切なことは分かっています。

しかし、心が動かされるのは、どちらの言葉でしょうか?

 

人は数字では動きません。感情で動くのです。

 

この“感情を動かす力”の根底にあるのが、リーダーが何を信じ、どんな想いでマネジメントしているか──つまり「信念」です。

つまり「信念」とは、リーダーの想いや価値観を軸とした行動の源です。

 

とはいえ、数字のプレッシャーに押しつぶされそうになる時ってありますよね?

私自身も支配人として、あるいは経営者として、日々「数字」と向き合っています。

売上目標、利益率、残業時間…。それらの数字が未達のとき、焦りや不安が襲ってきます。

 

ホテルの支配人時代には、売上未達で本社に呼ばれ、上司の前で報告書を読み上げたことも何度もありました。

今、社長という立場になっても、会社の預金残高を見て、「このままじゃまずい…」と不安になることもあります。

 

そんなとき、ついメンバーに「もっと頑張ってくれ」と、数字のプレッシャーだけをぶつけてしまう。

その結果、現場は疲弊し、メンバーのモチベーションも下がってしまった──そんな苦い経験を、私は何度もしています。

 

■伝えるのは“数字”か?信念か?

数字だけを言い続けても、部下の心は動きません。

むしろ「また数字か」と、反発を生み、部下はやらされ感に苛まれるようになります。

 

そんなときこそ必要なのが、“信念”というフィルターです。

たとえ会社からの指示が「単価を上げろ」であっても、それをそのまま部下に伝えても意味がありません。

自分の想いを通して、「なぜそれが必要なのか」「誰のためにそれをやるのか」を、自分の言葉で伝えることが大切なのです。

 

私が婚礼支配人をしていたとき、料理の単価を上げろという会社からの指示がありました。

しかし私はメンバーにこう伝えました。

 

「新郎新婦が本当に喜ぶのは、参列してくれたゲストが“この料理美味しかったね”と笑顔で話してくれること。

そのゲストの喜びが新郎新婦の幸せ繋がる。

だから、もう一つ上の料理を提案して、ゲストの笑顔をもっと増やしていこう!」とメンバーに伝えたところ、

その言葉に共感してくれたメンバーたちは、自信を持って提案をしはじめ、結果としてワンランク上の料理の受注率が大幅にアップしました。

 

■リーダーの信念が、組織の一体感をつくる

部下は、リーダーの「言葉」を見ているのではありません。

「その言葉の背景に、どんな想いがあるのか」を感じ取っています。

 

一貫性のある信念に基づいた言葉は、部下の共感を生み、行動を変えます。

一方で、上司が日によって言うことが変わる、都合のいいことばかり言う、相手によって対応が違う──

そんな“薄っぺらいリーダーシップ”は、部下の信頼を失い、やがて組織の歯車が狂っていきます。

 

■信念は「与えられるもの」ではなく、「自分でつくるもの」

リーダーの信念とは、会社から与えられるものではありません。

経営理念やビジョンをなぞるだけでは、部下の心は動かせない。

それを、自分の言葉にし、自分の想いとして語るからこそ、周囲に届くのです。

 

私自身の信念は「ホスピタリティで人を輝かせること」です。

ホスピタリティとは、単に丁寧な接客ではありません。

目の前の相手の喜びや幸福のために、こちらから働きかける“利他的な姿勢”です。

私はこの考えを、サービスの現場だけでなく、組織づくりやマネジメントにも応用したいと考えています。

 

つまり、職場を「働かされる場」ではなく、「やりがいと幸せを感じられる場」に変えていく。

そのために、自分の信念を語り、チームのベクトルを揃えることが、リーダーの役割だと思うのです。

 

とはいえ、数字をマネジメントしないわけではありません。

リーダーには当然、売上や生産性といった「ソロバン(数字)」を追う役割もあります。

 

でも、それを「どうやって達成するか?」ではなく、「なぜそれをやるのか?」から始める。

ここが“ロマン”を語るリーダーとの違いです。

 

数字に意味を与えるとは、「誰のための数字なのか?」を明確にすること。

お客様の笑顔の総和が売上につながる、

働く人のやりがいの総和が生産性になる──

そう信じて、数字を語るからこそ、数字が“目標”ではなく、“結果”になるのです。

 

■利己的なリーダーより、「利他的な信念」を持つリーダーへ

リーダーの信念には「利他の視点」が不可欠です。

 

「お客様に喜んでもらいたい」

「メンバーにやりがいを感じてほしい」

「自分の関わりが誰かの幸せにつながってほしい」

 

こうした想いがあるからこそ、リーダーの言葉に“熱”が宿ります。

この利他的な思考こそが、ホスピタリティの本質であり、メンバーとの“共感”を生む根っこになります。

 

ただ会社の数字や上司の評価のために頑張っているリーダーよりも、

「お客様のため」「メンバーのため」に信念を貫くリーダーのほうが、信頼され、

その姿に人はついてくるのです。

 

信念には「ストーリー」が必要です。

 

自分の経験、感じたこと、大切にしている価値観──

それを言語化して、部下に伝える。

“会社のため”というより、“誰かの幸せのため”という視点をもつ。

 

自分の信念を言語化するには、次のような問いを考えてみましょう。

問.何故、この仕事に就いたのか?(この仕事に就いたきっかけ)

問.あなたは、どんな時にこの仕事に「やりがい(貢献・評価・達成感)」を感じるか?

問.この仕事は世の中の誰の何に役立っているのか?

 

この3つの問いを考えた後に、

「私は〇〇のためにこの仕事をしています。」を考えてみてください。

この「〇〇」があなたの信念です。

 

但し、「私はお金を稼ぐため、私は生活のためにこの仕事をしています。」は手段であって目的ではありませんので「信念」にはなりません。

 

ある小売店のマネージャーは、

「私は、お客様がここに来ると元気になる、そんなお店をつくるためにこの仕事をしています。」

 

ある介護施設の施設長は、

「私は、利用者様とご家族に“ここに預けてよかった”と心から思っていただくために、この仕事をしています。」

 

このような信念を軸として、リーダーシップを発揮することが、あなた自身が「なぜこの仕事をするのか」という問いの答えでもあります。

 

そして、それを語ることで、部下の心は動き、“数字の向こう側”にある目的を共有するチームが生まれるのです。

 

売上やKPIは組織にとって大切な指標。

でも、それはあくまで「結果」であり、目的ではありません。

本当に部下の心を動かすのは、リーダーが何を大切にしているか、という“信念”です。

 

信念を言葉にすることで、チームは同じ方向を向き、自然と数字もついてきます。

「誰のために働くのか?」「この仕事で何を実現したいのか?」という“ロマン”が、チームを動かす原動力になるのです。

 

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