「良い理念があれば、組織は動く」
「ビジョンを掲げれば、人はついてくる」
「戦略さえ正しければ、結果は出る」
リーダーシップについて学ぶと、こうした言葉に多く出会います。
確かに、理念やビジョン、戦略は大切です。
リーダーが何を信じ、どこへ向かうのか。
そこが曖昧な組織は、いずれ迷い、ぶれていきます。
しかし現場の支援をしていると、私はいつも、ある違和感にぶつかります。
それは、多くのリーダーシップ論が「方向性」ばかりを語り、「実行力」については驚くほど触れていないということです。
リーダーがどんな理念を掲げているか。
どんな戦略を構築したか。
どんな決断を下したか。
どんな困難にもへこたれない精神を持っているか。
確かに、それらはリーダーの大切な要素でしょう。
けれど、組織が成果を出すために本当に必要なのは、そこだけではありません。
どれだけ立派な理念を語っても、
どれだけ美しい戦略を描いても、
現場で行動が起きなければ、何も変わらないのです。
極端に言えば、戦略とは「設計図」です。
設計図は必要です。
けれど、工事が始まらなければ、建物は一生完成しません。
つまり、成果が出ない組織に足りないのは、
「方向性」よりも、実行の方だったりします。
■リーダーシップが「自己満足」になってしまう瞬間
現場ではこんな光景がよく起きています。
リーダーは会議で理念を語る。
方針を打ち出す。
施策を決める。
けれど、実行する側のメンバーは動かない。
するとリーダーは、こう感じます。
「伝えたのに、なぜ動かない?」
「決めたのに、なぜやらない?」
「結局、やる気がないのか?」
しかし私は思うのです。
これはメンバーの問題ではなく、リーダーシップの設計ミスであることが多い。
なぜなら、実行力は“意志の強さ”だけでは生まれないからです。
実行力は、個人の根性ではなく、関係性の中で育つ力です。
もっと言えば、リーダーがどれだけ正しくても、
メンバーが実行できなければ、結果としてそのリーダーシップは「自己満足」に終わります。
厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、
私はここに、現代のリーダーが向き合うべき課題があると思っています。
■実行力が生まれない職場に共通する「見えない壁」
部下が動かないとき、よくある原因は「能力不足」ではありません。
むしろ多くの場合、部下の心の中にあるのは、こんな感情です。
・失敗したら怒られそう
・やっても評価されなさそう
・相談したら面倒な顔をされそう
・どうせ否定されるかもしれない
・余計なことをして責任を負いたくない
こうした“見えない壁”があると、部下は動きたくても動けません。
実行できないのではなく、実行しない方が安全になってしまうのです。
つまり、実行力とは能力ではなく、
「安心して行動できる土台」があるかどうかで決まります。
ここで重要になるのが、ホスピタリティです。
■実行力を高める鍵は「ホスピタリティ」にある
ホスピタリティというと、多くの人が「接客」をイメージします。
もちろんそれも大切です。
しかし私は、ホスピタリティをもっと広く捉えています。
ホスピタリティとは、相手の立場・感情・状況を想像し、尊重し、その人が力を発揮できる関係をつくる姿勢です。
そしてこの姿勢は、リーダーシップのど真ん中に必要です。
なぜなら、部下の実行力は、「管理」や「指示」で引き出すものではなく、
信頼と納得の中で自然に生まれてくるものだからです。
■実行力を高めるホスピタリティ・リーダーの3つの関わり方
それでは、ホスピタリティがあるリーダーは、現場で何をしているのか。
私は、実行力を生む関わり方には共通点があると感じています。
①「なぜ」を共有し、意味づけをする
指示が通らない組織ほど、「とにかくやれ」が増えていきます。
でも人は、意味がわからないことを続けられません。
行動を継続させるのは、命令ではなく納得です。
「何のためにやるのか」
「誰の役に立つのか」
「できると何が変わるのか」
ここを言語化することが、実行のエンジンになります。
②途中経過を承認し、挑戦を支える
実行とは、うまくいくことだけではありません。
試行錯誤が必ず起きます。
だからこそ、成果だけを見ていると、部下は挑戦できなくなります。
行動を増やしたいなら、評価より承認です。
「まず動いたのがいいね」
「工夫したのが伝わったよ」
「報告してくれてありがとう」
この一言が、次の実行をつくります。
③指示ではなく「選択肢」を渡し、主体性を育てる
実行力が高い人は、言われた通りに動く人ではありません。
自分で判断し、動ける人です。
そのためにはリーダーが、正解を渡すのではなく、選択肢を渡すこと。
「どっちがやりやすい?」
「まず何から手をつける?」
「今の状況なら、どう進めるのが良さそう?」
この問いかけが、部下の主体性を呼び起こします。
■戦略は「実行されて初めて」価値になる
ここまでお伝えしたいことはシンプルです。
戦略がいくら素晴らしくても、実行が伴わなければ成果は出ない。
だからこそ、リーダーは「方向性を示す力」と同じくらい、
部下の実行力を引き出す力を磨かなければいけない。
そして、その実行力を育てる上で、
ホスピタリティは欠かせない土台になる。
ホスピタリティは、優しさや甘さではありません。
人を動かし、成果を出すための“本質的なマネジメント技術”です。
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