
■部下が思うように動かないのは部下の心のコップが原因
「部下が自分の言う事を聞かない」
「指示したことをやらない」
こんなことを悩んでいるリーダーも多いと思います。
私がホテルマンを卒業して、ホスピタリティ・コンサルタントとして、
初めて仕事をいただいたホテルでの出来事です。
そのホテルの社長から
「最近、スタッフの入れ替わりなどからサービス品質が下り、
それに伴いお客様からの口コミ評価も、業績も下がっている」
と相談を受けました。
その後私からの提案で、
1年間でサービス品質を上げて業績向上を目指すプロジェクトを立ち上げることが決まり、
私がサポートさせていただく事になりました。
従って、私のミッションはホテルの「サービス品質向上」と「業績向上」です。
私は早速、そのミッションを遂行すべく現場を見てみると
「スタッフの笑顔」からはじまり、「館内のクリンネス」、「接客応対」等、
改善すべき課題が沢山見つかりました。
私は、それをすぐに現場にフィードバックをして改善を促しました。
しかし、一向に改善される気配がありません。
私は語気を荒げて「社長からの指示で実施してプロジェクトなのに、
何故、改善しないんですか!」とメンバーに訴えました。
メンバーからは、「人が居ない」「時間が無い」といった出来ない言い訳ばかり…。
それを受けて当時、私は社長に「スタッフ達のこの取り組みに対するやる気」
を問題にして訴えましたが、それは私の間違いであることに気付きました。
何故、メンバーが動かなかったか、
それは、「メンバーの心のコップを上向きになっていなかった」からです。
今思うと、社長が連れてきたコンサルタントがいきなり「ああしろ、こうしろ」と
上から言われても、現場が受け入れがたいと思うのも無理はありません。
つまりメンバーは、私に対しての「心のコップが伏せられた状態」であり、
私がどんなに正しいことや正論をかざしても、メンバーの心の中には何も入っていきません。
■自分にとって正しいことが効果的なマネジメントとは限らない
この事で私は、「自分にとって正しいことは、メンバーをマネジメントする上で効果的で
あるとは限らない」ということを学びました。
それから私は仕切り直して、メンバー一人ひとりの想いに耳を傾け、
これまでの苦労を労い、そして彼らのやりたいことを尊重するようにしたところ、
「メンバーの心のコップが少しずつ上向き」になり、私の言うことを受け入れ、
それに伴い現場改善が進み、成果に結びついていきました。
このような事象は、この後も行く先々で常に伴いましたが、
それからは、自分の正しいことは置いておいて、まずはメンバーの想いを知り、
関係性を作りながら、心のコップを上向けることを優先するようにしています。
これは、私だけではなく現場リーダーに置き換えても同様なことが日々起きています。
ある不動産店舗の店長も、異動で他店舗の店長に配属された際に、
最初からその店舗のダメなところを指摘ばかりをしてしまって、
既存の店舗メンバーの心のコップが上向きになるまでにかなりの時間を要して、
自分のやりたい事ができるようになるまで遠回りをしてしまったと言っていました。
このようにリーダーの責任感、正義感から、自分が正しいと思ったことを部下に押し付ける事が、
組織を束ねて目標達成を導く効果的なマネジメントになるとは限らず、
まずは部下の心のコップを上に向け、部下があなたの意見を受け入れられるようにすることが、
部下の力を引き出す上で重要であり、
それが結果的に成果に結びつくマネジメントへの近道となります。
※本トピックスは、著書『接客・サービス業のリーダーにとって一番大切なこと』(PHP研究所)
の内容を再編集しております。
https://thehospitalityteam.jp/wp/book-release/