■ あなたは、どちらの上司の下で働きたいですか？
想像してみてください。
A：いつも疲れていて、眉間にしわを寄せ、部下に厳しい言葉ばかりかける“自信のないリーダー”
B：明るく前向きで、失敗しても励ましてくれる“快活なリーダー”
どちらの上司の下で働きたいと思いますか？
…もちろん、Bの快活なリーダーですよね。
でも、ふと我に返って考えてみてください。
あなた自身は今、どちらのリーダーに近いでしょうか？
■リーダー自身の“自己肯定感”が組織に与える影響
実は、部下にポジティブな影響を与えるためには、リーダー自身が自分を肯定的に受け入れていること、つまり「自己肯定感」が欠かせません。
自分が好きか嫌いかは「自分の問題」で、他の人には関係ないと思いがちですが、実は自分を好意的に受け入れられない人は、他人も肯定的に受け入れづらい傾向があります。
つまり、自分のことを「ダメだ」と思っていると、部下のことも「ダメだ」と感じてしまうのです。
自己肯定感が低いリーダーは、無意識のうちに部下に対して否定的な見方をしてしまいがちです。
「なぜできないんだ」
「なんでやらないんだ」
と、部下を責める言葉が出てくるのは、自分の心の余裕のなさ、つまりリーダーであるあなた自身の「心のコップ」が空になっているサインかもしれません。
■悪者に徹していたリーダーが変わった瞬間
私が以前、サポートした企業のある現場のリーダーは、いつも厳しい態度で部下に接していました。
私は「なぜ、そこまで厳しくするのですか？」と尋ねました。
するとそのリーダーは、
「この部署で結果を出すことが自分の責任だと思っています。結果が出ないと、部下の給与や賞与、そして部署そのものの存続にも関わる。だから、私は悪者に徹して厳しくしているのです。」
良かれと思って意図的にしている厳しいリーダーは、部下との関係性も悪く、結果ばかり求められるので、「結果的に、組織全体にも疲弊が広がっていました。」
そして、そのリーダー自身も、自分が悪者になることは決して自分を肯定する行為ではなく疲弊していました。
それから私はそのリーダーに、「無理に厳しくしなくても、あなたのありのままの姿で十分にリーダーシップは発揮できる』と伝え、部下と本音で向き合うようアドバイスをしました。」
すると、リーダーと部下との関係の質が改善し、結果に結び付いたのです。
このように、上司の責任感から組織を疲弊させてしまうケースも少なくありません。
大切なのは、自分は部下にとってどんな存在でありたいのかを見つめ直し、ポジティブなマインドで関わること。
その結果、リーダー自身の在り方が変わり、関係の質が高まり、組織の成果にもつながっていくのです。
■自己肯定感を高める行動とホスピタリティ思考
ひと言で「自己肯定感」といっても実は、次の種類があります。
□ 自己受容感・・・ありのままの自分を認める感覚。
□ 自己効力感・・・自分にはできると思える感覚。
□ 自己信頼感・・・自分を信じられる感覚。
□ 自己決定感・・・自分で主体的に決め、それをできるという感覚。
□ 自己有用感・・・自分は何かの役に立っているという感覚。
したがって、この5種類の感覚を高めることで、自分を肯定的に受け入れることができ、自信に満ち溢れるリーダーになることを可能にします。
特にすぐに自己肯定感を高める近道は、ホスピタリティ思考を習慣化することです。
つまり、それは「自分本位」ではなく「相手本位」で考え、自分で自分を褒められる行動を積み重ねることを意味します。
例えば、プライベートであれば、
・電車で席をゆずった。
・落ちていたごみを拾った。
・落とし物を交番に届けた。
仕事であれば、
・部下をほめて喜ばれた。
・部下に感謝の気持ちを伝えた。
・部下が困っている時に相談に乗った。
このような行動を積み重ねることで、脳内ではドーパミンやオキシトシンといった“幸せホルモン”が分泌されます。
ドーパミンは「快」の感情を生み出し、「自分は良いことをした」という達成感や満足感をもたらします。
そしてその感覚が、「自分には人の役に立つ力がある＝自己効力感」や「自分には存在価値がある＝自己有用感」へとつながっていきます。
こうしたポジティブな感覚が積み重なることで、自己肯定感が自然と育まれていくのです。
つまり、「ホスピタリティの思考」を日々の行動に取り入れることは、他人のためだけでなく、自分の心を整え、自信を育てる近道でもあるのです。
「リーダーとして部下を大切にしたい」
「メンバーに安心して働いてもらいたい」
そう願うなら、まずは自分自身を大切にすることから始めてみてください。
リーダーであるあなたの“心のコップ”が満たされていなければ、誰かのコップを満たすことはできません。
だからこそ、リーダーにとっての“自己肯定感”は、部下との信頼関係の第一歩でもあるのです。
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