人的資本で企業価値を最大化する経営へ
ホスピタリティ経営
すべての企業に捧ぐ経営戦略Webマガジン
一般的に企業の経営者の皆様は、顧客に心のこもったおもてなしを提供して付加価値を高めて顧客満足度や売上を上げようとしていると思うのですが、実は順番が逆なのです。
まずは、お客様にホスピタリティを提供する前に、社内にホスピタリティをインストールすることが重要です。
何故ならば、ホスピタリティや真の付加価値というのは、従業員自身の主体性が伴わないと提供できないからです。
分かりやすく言えば、「社内に笑顔がないのに、お客様の前だけで笑顔になることは不可能」であるということを意味します。
それは理屈ではなく、私の実体験により証明されております。
私がホスピタリティチームを起業した当時の弊社へのオーダーは、
ホスピタリティの力で接客サービスの品質を高めて、顧客満足度、リピート率を上げて欲しいというオーダーが大半でした。
その起業当時に、知り合いのサービスエリアの支配人から接客レベルを上げて欲しいという研修の依頼をいただきました。
その研修中に事件は起こりました。
それは、私が「どうすればお客様にもっと喜んでいただけるかみんなで考えましょう!」といった研修を実施していたところ、突然、年配の女性スタッフが手を挙げて、
「先生、こんなことをやっても無駄です!」と発言をしたのです。
私が慌てて「何故ですか?」
と聞くと、
「こんなに人間関係がぐちゃぐちゃな職場で、お客様の前で笑顔なんてできません!」と言われてしまったのです。
私の中では衝撃でした。
そして気付きました。
「ホスピタリティはお客様の為だけにあるものではない」
そして「真のホスピタリティをお客様に提供するには、まずは社内の従業員同士のホスピタリティが重要である」ということが分かったのです。
それから、私はお客様へのホスピタリティを考えると同時に、上司と部下、部署間、社員同士のホスピタリティをチェックして、
社内に課題がある場合は、その課題を優先的に解決すると、結果的にお客様へのホスピタリティレベルの向上や業績向上などの成果に繋がることが分かったのです。
他社と明確な価値の違いをつくるには、企業運営にホスピタリティをインストールして、社内の「関係の質」を向上させることが重要です。
これは先ほどからご説明している通り、まずはお客様以前に、従業員同士のお互いの尊重、承認、思いやりや気遣いといったホスピタリティが重要だということです。
つまり、利己主義、他責思考の従業員ばかりだと、人間関係の課題が起きやすく、社内の摩擦により消耗戦が繰り広げられ、経営者が求める十分な結果が得られないということを意味します。
それを証明しているのが、最近注目されている組織論で、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の提供している「組織の成功循環サイクル」です。
この理論によると、企業や組織が結果や成果を導く上で大切なのは、まずは組織内の「関係の質」を高めることであるということ。
それによって、社内の人間関係のストレスが減り、社員が前向きとなって「思考の質」が高まる。
思考の質が高まると、「主体的、自発的な行動の質」が高まる、
そして結果的に「結果の質」が高まるといった理論です。
我々経営者は、どうしても従業員たちに、苦しい経営状況の中で、目の前の売上を稼ぐ為に「結果の質」ばかりを求めてしまう傾向があります。
しかし、結果ばかりを求めると、従業員は疲弊し、離職も増えるばかりだということを経営者は理解することが必要です。
従って、まずは・社内の「関係の質」を高めることで、働きやすい、心理的安全性の高い職場をつくること。
そして、それが職場の人間関係のストレスから解放され、従業員が本来すべき仕事に専念できる環境を作り、社員の主体性ややる気を引き出すことで結果に繋がるということなんです。
実は、この「関係の質」を高めることで得られる企業の成果は、まさにこれからの時代の企業に求められることに直結しています。
いくつかのポイントを挙げると、
1.慢性的な人員不足の改善
労働人口の減少や接客・サービス業離れから離職が減らないという相談を多くいただきます。
その真の退職理由で最も多いのが「人間関係」によるものです。
仕事が嫌で辞めるのではなく、「人間関係」で退職されるほどもったいないことはありません。
その上で、社内の「関係の質」を高めることは離職防止に繋がります。
2.生産性向上
人員不足から社員一人あたりの生産性の向上が求められる中、Googleの調査で、
生産性の高い職場の条件で一番重要なのは、「心理的安全性」が組織の生産性を上げる上で最も重要だと結論づけられました。
その上で、如何に職場の関係の質を高めて心理的安全性を高めつことが、生産性向上の鍵となります。
3.不確実性時代、VUCA時代の共創環境醸成
これまでの前年踏襲で何とかなっていた時代から、新しい価値を生み出す。
ゼロからイチを生み出さなければならない時代に突入しております。
その上で、従業員同士の集合知を活かした「共創力」が求められます。
それには、何でも言い合える、アイデアを出し合える共創環境が必要であり、それには高い関係の質が求められます。
4.接客サービスの付加価値向上
従業員同士の関係の質が高まれば、自然と職場に笑顔が溢れ、お客様に自然な笑顔でサービスが提供できるようになります。
逆によくあるのが、飲食店でキッチンとホールスタッフの「関係の質」が悪い店舗は、店舗のムードが悪く、顧客からのリクエストもマニュアル以外ことは受けないといった仕事のやり方になってしまいます
しかし、関係の質が高いと、従業員同士のリレーションも高まり、連携してプラスアルファのサービスをスタッフが自発的に提供しやすくなるのです。
その点では接客サービスにおける付加価値の提供という視点で関係の質の向上は外せません。
このように社内の関係の質を高めることは、これからの時代に求められる企業運営の根幹となり、
「顧客からも従業員から選ばれる会社」になるということに繋がります。
勘違いしていただきたくないのは、「関係の質が高い=仲良くなれば良い」ということではないということです。
私たちは、仕事として事業を行っており、顧客に価値を提供して、その対価としてお金をいただいて事業を成り立たせています。
従って、「関係の質」を上げることで売上、利益といった成果に繋げることを前提として考える必要があります。
私が考える「高い関係の質」の定義は、「組織がうまく機能していて、働く社員一人ひとりが十分に活かされており、生産性が最大化できている状態」です。
逆に言えば、私がこれまで見てきた組織では、従業員一人ひとりが十分に活かされていない組織が多く、「伸びしろを感じる組織」が殆どなのです。
関係の質の高い組織の具体的な特徴としては、
・社内に「笑顔」と「ありがとう」が溢れていて人間関係のストレスが少ない。
・従業員同士にお互いの信頼関係があり、自社の商品やサービスに自信と誇りを持っている。
・組織内が「内向き」ではなく、「外向き」な思考で組織が目指す目標に対して皆が主体的に達成を目指している。
このような特徴がみられます。
従って、いくら良い商品やサービスがあっても、従業員の「主体的な心」が「伴う」のと「伴わない」のとでは結果は大きく変わるということです。
その上で、社内の「関係の質」が高いか、低いかによって業績に大きなインパクトがあることを経営者は理解していただきたいのです。
このような関係の質を向上する上で、相手への尊重や承認をベースとしたおもいやりや気遣い、真心、そして相手への貢献を喜びに変えるホスピタリティを企業にインストールして、共通価値化することは、人間が提供する価値によって競合との間に“明確な価値の違い”を作り、持続的な成功を確保する“効果的なマネジメントであることは間違いありません。
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