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ホスピタリティ経営
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日本のサービス業においては、海外の先進諸国に比べて「生産性が低い」と指摘されています。
その理由は大きく3つ挙げられます。
ひとつは、サービス業は人による労働生産性の高い「労働集約型」であるが故に、
製造業のように自動化や省人化がしづらい為、人手がかかり生産性が低くなってしまうというという点。
そしてふたつ目が日本文化の「おもてなし」が象徴するように、日本の企業は顧客満足を重要視し、
手厚いサービスを大切にしている為、1店舗当たりの人員が海外に比べて多くなり、生産性が下がってしまうという点。
そして3つ目が日本のホテルを代表するように、海外に比べて良心的な値段設定であり、
国内景気の低迷による需要等を考えると、価格を上げることが難しく、
それに加えて、昨今の物価高を価格に転嫁し切れておらず生産性が上がらない。
このような点が日本のサービス業の生産性の上がらない原因と考えられます。
それでは、どのようにすればサービス業における労働生産性は上がるのでしょうか?
労働生産性は、下記の式であらわされます。
労働生産性=付加価値額 / 労働投入量
※付加価値額・・・人件費+経常利益+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却
※労働投入量・・・労働者数×労働時間
つまり、労働生産性を上げたいのであれば、
「付加価値額」を上げるか、「労働投入量」を下げるかのどちらかです。
コロナ禍以降のサービス業を見ると、「非接触が良い」という思考が消費者に根付き、
それに伴って、サービス業も人手不足の解消にもなるということで、
・飲食店では配膳ロボットや、自動精算機を導入して効率化を図る。
・スーパーマーケットではセルフレジ化が進む。
・ホテルでは自動チェックイン、チェックアウトのシステム化が進む。
このように労働投入量を削減し、この急場を乗り越えてきました。
しかしその一方で、人が提供する「付加価値額」も減らしてきたので、
思ったように労働生産性が上がっていないというのが現状です。
このような事からも分かるように「労働投入量」を減らして、省人化を進めることは、
「商品そのものの価値」「価格の値ごろ感」「スペック」を突き詰めることとなり、
その先にあるのは、
・更なる他社との商品自体の差別化訴求。
・他社よりも1円でも安いという価格競争。
・施設の頻繁なリニューアルにより新しさをアピール。
といった消費者に対して「機能的価値」の追求となります。
一方で、「付加価値額」を上げるということは、人による顧客の体験価値を上げることを意味し、
・○○さんから買いたい。
・また、あなたに会いに来たい。
・スタッフの感じが良いのでまた来たい。
といった消費者に対する「情緒的価値」の追求となります。
いずれにしても労働生産性を高めることは、「労働投入量」を減らすか、
「付加価値額」を上げるであることは間違いありませんが、
労働投入量を減らして「省人化」を促進することは、逆に他社との差別化がしづらい、
「商品」「価格」「スペック」が消費者の選択のすべてになるということも考えなければいけません。
一方の「付加価値額」を高めることは、人が提供する価値を高めることを意味し、
目の前の顧客を心から想い、その顧客の期待に応じた対応をする「ホスピタリティ」の提供に他なりません。
自動販売機では100円の原価のジュースが150円でしか売れませんが、
高級ホテルのラウンジでホテリエが提供すれば1000円でも、顧客は喜んで買っていただけるのです。
その上で労働生産性を上げるベストな選択は、人でなくても良いところの省人化、効率化を進めること、
例えば旅館であれば、顧客に料理を提供する手前までは配膳ロボットが料理を運ぶ、
顧客情報をDX化して、スタッフがスマホで情報確認ができるなどが挙げられます。
その一方で従業員に対しては、マニュアルを超えた付加価値サービスが提供できるようになるように、
ホスピタリティ教育をして「人が提供する付加価値」を高めること。
この両方をバランスを取りながら突き詰めることが、これからのサービス業の経営には求められます。
ザ・ホスピタリティチーム(株)では、差別化サービスや付加価値提供に関するコンサルティングや研修のサービスを提供しておりますので、お気軽にお問合せください。