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ホスピタリティ経営
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接客サービス業において、売上を上げる為にどの企業も躍起になっていますが、
実は、接客サービス業の特性を理解しているかどうかで結果に大きな違いが生まれます。
例えば、一般的な売上を上げる方法は、
・広告宣伝をして集客を図る。
・キャンペーンを実施してお得感を出して購買を促す。
・新しい販売チャネルを開拓する。
といった施策が考えられますが、これらも接客サービス業の特性を理解しているかどうかで、
大きな違いを生みます。
その特性とは何か?
それは、接客サービス業は「感情労働」であるということです。
つまり、接客サービス業の最大の特徴は従業員の感情によって売上に大きな差を生むということです。
私がホスピタリティコンサルタントとして、あるホテルのウェディング部門にサポートに入った時のことです。
そのホテルでは、少し前にブライダル支配人が入れ替わり、それから業績が大幅に下がっていました。
その原因を探ると、支配人とプランナーとの関係性がうまくいっておらず、
支配人はプランナーに売上ノルマを強要し、プランナー達は「新郎新婦のしあわせのお手伝い」の為に仕事をしている意識が強い為、両者の気持ちの乖離が生じて、そのマネジメントによってプランナー達は疲弊して、受注率を大きく下げていました。
そんな中、私が中に入り、支配人の意識を売上至上主義から、部下であるプランナーに対する思いやりや気遣いといったホスピタリティの必要性や、プランナー達は「新郎新婦への貢献による喜びを自分達の仕事のやりがいにしていること」を説き、プランナー達にも支配人の組織のリーダーとしての使命感を理解していただき、両者の社内のホスピタリティであるインナーホスピタリティを高めたところ、支配人とプランナーの関係の質が向上し、たちまち受注率が回復し、大きく売上を伸ばす結果となりました。
このように、商品や広告宣伝以前に、そこで働く従業員の感情によって売上が大きく変わることを理解することが重要です。
それでは、どのようにすれば従業員の感情をマネジメントして売上を上げることができるのでしょうか?
それには次のシンプルな3つのことが大切になります。
1.メンバーの気持ちを「売らなければならない」から「売りたい」に変える
先ほどの例で言えば、これからのマネジメントは「強制力」や「アメとムチ」では、
思ったような成果は生まれないとリーダーは考える必要があります。
そして如何に、メンバー自らが「売りたい!」と思えるマインドにするかが重要です。
それには、如何にメンバーが自社の商品やサービスに愛着を持つことが重要です。
これも私の経験ですが、私が前職のホテルのブライダル支配人だった時代に、新商品のスナップ写真のアルバムを取引業者から提案されました。
それまでは、私が精査し販売するかどうか決めていたのですが、プランナー達に商品の見本を見せたところ、「もっとっここを改善して欲しい」「こんなデザインになったらいいのに」という意見が寄せられ、取引業者に改善してもらったところ、今までの2倍の受注数を獲得したのです。
まさに、プランナーが「売りたい商品」を作った結果と言えます。
このように、新商品や新メニュー、新サービスなどを開発プロセスに、実際に販売に関わる現場のメンバーを巻き込むかどうかで売上に大きな影響を与えます。
また、ここにおいても社内の関係の質を高めることが重要であり、社内の関係性が悪いと「売りたい」よりも、社内への不満が先に立ち「仕事だから仕方なく売る」というマインドになってしまいます。
したがって、メンバーの気持ちを社内や上司への不満といった「内向き」から、顧客への喜びへの貢献といった「外向き」にすることも、売上を向上させる上では重要となります。
2.達成したい目標を持つ
一般的にメンバーに与えられる目標というのは「会社から与えられる予算」であったり、「ノルマ」だったりします。
このような目標は、会社から給料をもらう為の「義務感」として達成は目指しますが、自らが目指したい、達成したい目標ではない為、達成への可能性を低くしてしまっていることにリーダーは気づく必要があります。
それは、会社から与えられた目標は「外発的動機付け」であり、本来のメンバーの力を発揮するには、メンバー自身の中から湧き上がってくる「内発的動機付け」が必要であり、目標においても、内発的動機付けを引き出す目標設定が必要です
それでは、内発的動機付けを引き出す目標設定とはどのような目標なのでしょうか?
それには、まず自分で目標を決めることが重要です。
その中でも、売上目標といった定量的な目標ではなく、「なりたい自分」や「自分の仕事の目的」といった定性的な目標が効果的です。
「お客様に、担当があなたで良かったという人になりたい」
「また、あなたに会いたいと思われる人になりたい」
「出会った全てのお客様を笑顔にするためにこの仕事をする」
このような定性的な目標をメンバー自身で設定し、その達成基準が会社から与えられた定量的な目標とすることで、「数字」に意味を持たせることができます。
これは、個人ではなく組織でも同じことが言えます。
「売上10億円を達成する為に頑張ろう!」と「1万人のお客様を笑顔にするために頑張ろう!」
とでは、接客サービス業で働くスタッフに関しては、後者のほうが明らかに頑張れるのです。
このようなこともリーダーとして理解する必要があります。
3.ホスピタリティ・付加価値の追求
そして3つ目のポイントは、メンバーにホスピタリティの追求を意識づけることです。
これからの時代のサービスは二極化すると考えられており、マニュアル通りの平準化したサービスはAIやロボット等のテクノロジーが担います。
これはこれで省人化、効率化という点では効果的ですが、一方で、接客サービスが伴わないので、商品そのものの差別化や価格競争に陥りやすい傾向があります。
一方で、人が提供する価値は顧客に対するホスピタリティ、つまり顧客に対する心が伴ったおもてなしや気遣いを意味します。
これこそが付加価値であり、この付加価値の提供こそが売上アップの鍵となります。
例えば、原価100円ジュースが自動販売機では150円にしかなりませんが、ホテルのラウンジでホテリエがサービスすると1000円で販売できるという付加価値を生みます。
また働くスタッフも、マニュアル通りの定型型サービスの提供は、流れ作業で仕事のやりがいや喜びを感じにくいのですが、各顧客に応じたホスピタリティの提供は、顧客の笑顔やありがとうといった感謝の言葉をいただけることにより、スタッフ自身の「精神的報酬」に繋がり、自分の仕事の意味ややりがいに繋がります。
このように、ホスピタリティの追求は顧客への付加価値の提供による単価アップやスタッフのやる気向上による生産性の向上という点から売上増に繋がるのです。
ザ・ホスピタリティチーム(株)では、サービス業の特性を活かして売上を向上させるコンサルタント、研修、講演のサービスを提供していますので、お気軽にお問合せください。