2025.07.04
マネジメントコラム
部下のやる気を高める シンプルなやり方! ~ 部下の心を満タンにする方法 ~
■心の栄養がなければ、やる気は育たない
これからの時代、組織の生産性を高めるリーダーシップは、かつてのような「指示・管理・命令型マネジメント」では限界があります。
代わって求められているのは、「主体性」や「自発性」によって社員一人ひとりが輝く組織運営です。
では、どうすれば部下の主体性や自発性を引き出すことができるのでしょうか。
一般的には「権限移譲」などの「仕事の任せ方」が語られますが、実はその前に行うべき、
もっと重要なステップがあります。
それが「部下の心を満たす」ということです。
部下の心が疲弊した状態で、主体性や自発性を引き出すのは不可能です。
そして、その“心の状態”に決定的な影響を与えるのが、上司との「関係の質」です。
部下が、
「話しかけやすいと感じているか?」
「自由に提案や意見ができる空気があるか?」
「問題を率直に共有できる関係か?」
こうした関係性がない状態では、部下は沈黙し、指示待ちの姿勢になってしまいます。
「うちの部下は主体性がない」と嘆く前に、リーダー自身が「関係性を築く努力をしてきたか?」と自問してみることが大切です。
■ストロークとは何か?
こうした信頼関係を築くための鍵が、「ストローク」です。
ストロークとは、「相手の存在を認める行為」であり、アメリカの心理学者エリック・バーンが提唱した交流分析理論に基づく概念です。
あいさつ、感謝、声かけ、笑顔、ねぎらい…そのすべてが、相手の“心の栄養”になります。
そして、ストロークは「度数」で表されます。
たとえば挨拶一つでも、
「おはようございます」と言葉にする→1度数
目を見る→2度数
笑顔で→3度数
名前を呼ぶ→4度数
このように、度数が増えれば増えるほど、相手の心の栄養は満たされていくという考え方です。
実際、私の研修でも「ストローク度数の違いによる挨拶比較」を体験してもらうと、その効果の違いを誰もが実感します。
■行動習慣を変えれば、関係の質は変わる
ストロークは挨拶だけではありません。
たとえば、部下に話しかけられてもパソコンに向かったまま対応する…よく見かける光景ですが、これはストロークが極めて低い対応です。
・手を止めて、
・体を部下に向けて、
・目を見て、
・うなずきながら傾聴する
これだけで、部下の心の満たされ方は大きく変わります。
「ありがとう」「笑顔」「名前を呼ぶ」「困っていることはない?」と声をかける——
これらはすべて、日常的に行えるストロークです。
部下が話しかけてこなければ関わらない…という姿勢では、信頼関係は築けません。
プラスのストロークの積み重ねこそが、部下のエンゲージメントを高め、職場の活力を生むのです。
最近では、ハラスメントのリスクから、あまり余計な関わりを部下とは持たないようにしているというリーダーに出会います。
確かに関わらなければリスクは減るかもしれません。
一方で、ハラスメント事例の多くは、関係が希薄な部下とのトラブルが圧倒的に多いというのも事実です。
ハラスメントは、部下が上司の言動をどう受け止めるかによって成立します。
したがって、お互いの関係の質が高ければ、多少の言い間違いや不適切な言動であっても、
相手の善意として受け取ってもらえることもあるのです。
私たちは人生の多くの時間を【仕事】に費やしています。
その時間を、単にお金を稼ぐため、生活のためだけに過ごすべきでしょうか?
私はそうは思いません。
仕事は、同じ目的を目指す仲間と一緒に、しあわせが実感できる時間にするべきだと考えます。
そして、その空気をつくるキーマンこそが、組織の中で影響の輪が大きい、リーダーであるあなたなのです。
■ストロークが顧客満足にもつながる
そして、これは職場内だけの話ではありません。
ストロークが活発な組織は、対お客様への対応にもその姿勢が表れます。
リーダーを中心にストロークが自然に行われている職場では、スタッフ同士の雰囲気が良く、
結果的にお客様に対する心のこもった接遇にもつながり、顧客満足度の向上に直結するのです。
■体験談:ストロークが組織を変えた
私がホテルの支配人をしていた頃、部下は15名。
このストローク理論を知る前の私は、全員に平等な関わりができていたとは言えませんでした。
気の合う部下、デスクが近い部下とはよく話す一方、話しかけづらい部下とは関係が希薄になっていました。
そんなある日、関係の薄かった部下から退職の相談を受け、「自分がこの職場にいる意味を感じない」と言われたのです。
私はハッとしました。
この一言は、私のストローク不足が生んだ結果だったのです。
そこから、
・出勤メンバー全員と1日1回は必ず対話する
・あえて離れた席で仕事をしてみる
など、意識的にストロークの量を増やすようにしました。
その結果、部下たちとの関係性は大きく改善し、職場の雰囲気が明るくなり、最終的に“日本一”の結果を出すことができたのです。
これはまさに、マサチューセッツ工科大学、ダニエル・キム教授の提唱する「組織の成功循環モデル」、
メンバーとの関係の質が、前向きな思考となり、自発的な行動を生み、結果の質につながる。
これが実際に機能した瞬間でした。
■リーダーがまずはじめる行動習慣
「関係の質を高めたい」と思っても、何から始めればいいか分からないリーダーは多いかもしれません。
でも、難しく考える必要はありません。
大切なのは、「相手の心を満たす行動=ストローク」をリーダー自身の思考と行動習慣にすることです。
部下の心が満たされれば、
→ 関係の質が高まり、
→ 思考の質が上がり、
→ 自発的な行動が生まれ、
→ 結果に結びつく。
このサイクルを回すための第一歩が、リーダーのストロークなのです。
これからの時代のマネジメントの土台となる、
それが、「心を満たすマネジメント」なのです。
ザ・ホスピタリティチーム㈱では、リーダーシップ、心理的安全性、組織づくり、ホスピタリティに関する
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