近年、転職は特別なことではなくなりました。
厚生労働省の調査を見ても、転職経験者は年々増加しており、
多くの企業が新卒採用だけでなくキャリア採用に力を入れています。
しかし、企業からよく聞く悩みがあります。
「せっかく採用したのに、なかなか組織になじめない」
「思ったように力を発揮してもらえない」
「半年以内に辞めてしまう人もいる」
一方で、転職者側もこんな悩みを抱えています。
「会社の雰囲気になじめない」
「誰に相談したらいいかわからない」
「前職との違いに戸惑う」
「期待に応えられているか不安」
実は、転職後にうまくいくかどうかは、本人の能力だけで決まるわけではありません。
大切なのは、
「オンボーディング」
です。
オンボーディングとは、新しく入社した社員が組織になじみ、
早期に活躍できるよう支援する取り組みのことを言います。
私はホスピタリティコンサルタントとして多くの企業を見てきましたが、
オンボーディングがうまくいく組織には共通点があります。
それは、
「入社する側の努力」と「受け入れる側のホスピタリティ」の両方があること。
今回は、オンボーディング成功のポイントをホスピタリティの視点から考えてみたいと思います。
■入社する側に求められる3つのプロアクティブ行動
新しい環境に飛び込むと、不安や緊張を感じるのは当然です。
しかし、「誰かが助けてくれるだろう」「そのうち慣れるだろう」と受け身でいるだけでは、なかなか組織にはなじめません。
そこで重要になるのが、
プロアクティブ行動(主体的行動)
です。
① 自己指向型行動
~まずは自分から学ぶ~
新しい会社には、新しいルールや文化があります。
「前の会社ではこうだった」
ではなく、
「この会社ではどう考えているのだろう?」
という姿勢で学ぶことが大切です。
わからないことを質問する。
自ら情報を取りに行く。
必要な知識を学ぶ。
まずは自分から動くことが成長への第一歩になります。
【具体例】
・分からないことを自ら質問する
・会社の理念やルールを積極的に学ぶ
・必要な知識やスキルを自主的に習得する
② 他者指向型行動
~まずは自分から関わる~
人間関係ができるのを待つのではなく、自分から挨拶をする、声を掛ける、相談する。
実はこれも立派なプロアクティブ行動です。
ホスピタリティとは「相手のために主体的に行動すること」。
新しい環境であっても、自ら相手に関心を持ち、自ら関わろうとする姿勢が信頼関係を生みます。
【具体例】
・自分から挨拶や声掛けをする
・積極的に周囲へ相談する
・他部署のメンバーとも交流する
③ 仕事指向型行動
~より良くする視点を持つ~
仕事を覚えるだけでなく、
「もっと良くできないだろうか?」
「お客様に喜んでいただくために何ができるだろうか?」
という視点を持つことも重要です。
改善提案や工夫は、組織への貢献につながります。
新しい環境だからこそ見える気付きもあるはずです。
【具体例】
・業務改善のアイデアを提案する
・お客様や利用者目線で仕事を考える
・任された仕事に+αの工夫を加える
■しかし、それだけではオンボーディングは成功しない
ここで大切なのは、
オンボーディングの責任を入社者だけに押し付けてはいけない
ということです。
私はこれまで多くの企業を見てきましたが、
「主体的に行動してください」
と言いながら、
質問しづらい雰囲気だったり、
新しい意見を受け入れなかったりする職場も少なくありません。
これでは、せっかくのプロアクティブ行動も生まれません。
オンボーディングは、
入社者と受け入れ側の共同作業
なのです。
■受け入れる側に求められる4つのホスピタリティ
① 歓迎感
人は歓迎されていると感じると安心します。
「入社してくれてありがとう」
「一緒に働けることを楽しみにしていました」
そんな言葉だけでも大きな力になります。
歓迎感は、組織のホスピタリティそのものです。
【具体例】
・入社時に歓迎の言葉を伝える
・積極的に声を掛ける
・職場メンバーへ紹介する機会をつくる
② 役割の明確化
新しい職場で最も不安なのは、
「自分は何を期待されているのだろう?」
が分からないことです。
自分の役割や期待されていることが明確になることで、
「ここでやっていけそうだ」
という安心感につながります。
【具体例】
・期待する役割を明確に伝える
・目標や評価基準を共有する
・相談相手や担当業務を明確にする
③ 心理的安全性
質問しても大丈夫。
失敗しても相談できる。
そんな環境があるからこそ、人は挑戦できます。
心理的安全性は、プロアクティブ行動を後押しする土台です。
【具体例】
・質問しやすい雰囲気をつくる
・失敗を責めず成長の機会として捉える
・定期的に面談や声掛けを行う
④ 支え合う文化
困っている仲間がいたら声を掛ける。
教える。
助ける。
これはまさにインナーホスピタリティです。
社員同士が支え合う文化は、新しく入った仲間にとって大きな安心材料になります。
【具体例】
・困っている人に声を掛ける
・知識や経験を共有する
・チームでフォローし合う
■オンボーディング成功の方程式
私はオンボーディング成功のポイントを、図のように整理しています。
新しい環境で活躍するためには、入社する側の主体的な行動だけでなく、受け入れる側のホスピタリティも欠かせません。
入社する側と受け入れる側の双方が歩み寄ることで、定着率向上、早期戦力化、エンゲージメント向上につながります。
特に、入社する側の「3つのプロアクティブ行動」と、受け入れる側の「4つの受け入れポイント」が重要になります。
■ホスピタリティはお客様だけのものではない
ホスピタリティというと、お客様へのおもてなしを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、本当に強い組織は、お客様だけでなく、
「共に働く仲間」にもホスピタリティを発揮しています。
新しく入った仲間を歓迎する。
相手が活躍しやすい環境を整える。
困った時に支える。
これも立派なホスピタリティです。
転職が当たり前の時代だからこそ、
「どう採用するか」だけでなく、
「どう迎え入れるか」
が組織の未来を左右する重要なテーマになっています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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