ホスピタリティ・マネジメントが今、求められる理由|THTホスピタリティ・マネジメント Vol.00

2026.09.01

ホスピタリティ・マネジメントが今、求められる理由|THTホスピタリティ・マネジメント Vol.00

THTホスピタリティ・マネジメンコラムト

THTホスピタリティ・マネジメント|全24回
序章|ホスピタリティを「おもてなし」から「経営の力」へ

 

■なぜ今、私が「ホスピタリティ・マネジメント」を伝えたいのか

私はこれまで、ホテルの現場からホスピタリティコンサルタントまで、

約35年間、ホスピタリティ産業一筋で歩んできました。

                                                                                          

ホテルマンとして17年間、現場でお客様と向き合い、

その後、ザ・ホスピタリティチームを起業してからは、さまざまな企業の研修やコンサルティングを通じて、

「どうすれば、ホスピタリティを顧客サービスに生かすことができるのか」

を考え続けてきました。

                                                                                          

お客様の期待を超えるサービスとは何か。

どうすれば、スタッフ一人ひとりがマニュアルを超えて、お客様のために自ら考え、行動できるのか。

どうすれば、ホスピタリティを企業の「選ばれる理由」にできるのか。

そんなことを長年、現場の皆さんと一緒に考え、実践してきました。

                                                                                             

しかし、それを突き詰めれば突き詰めるほど、私はあることに気づくようになりました。

お客様へのホスピタリティだけを高めようとしても、うまくいかない。

その前に大切なのは、そこで働く人たちが、互いに尊重され、認められ、

思いやりや気遣いを持って関わることのできる職場をつくることでした。

上司が部下を尊重する。

部下も上司の立場を理解する。

同僚同士が互いを認め、支え合う。

部署を越えて、相手の立場を考えて仕事をする。

こうした社内のホスピタリティによって、人と人との関係が良くなれば、働く人の心に余裕が生まれ、

一人ひとりが持つ力を発揮しやすくなります。

                                                                                            

そして、自分の仕事に意味ややりがいを感じ、

「目の前のお客様のために、自分に何ができるだろう?」

と自ら考え、行動するようになる。

私は、多くの企業や現場に関わる中で、

人の価値が高まることが、顧客への価値を高める。

ということを何度も実感してきました。

                                                                                                

そして、さらに考えを深めていくと、

ホスピタリティは「接客サービスを良くするための考え方」だけではないことが見えてきました。

人と人との関係をつくること。

一人ひとりの力を引き出すこと。

働く人が自分の仕事に意味や誇りを持つこと。

その力を顧客への価値につなげること。

そして、その企業らしい価値を顧客や社会へ届け、社会から必要とされる企業になること。

                                                                                            

つまり、

ホスピタリティは、人の価値を高め、顧客への価値を高め、企業・社会への価値へとつなげていく力なのではないか。

そう考えるようになったのです。

                                                                                            

それ以来、試行錯誤を重ねながら、ホスピタリティを「人」「顧客」「企業・社会」、そして「経営」という視点から捉え直し、

書籍やYouTube、コラム、企業研修などを通じて発信してきました。

                                                                                          

そして今、ザ・ホスピタリティチーム㈱も創業20年という節目に向かっています。

だからこそ、ここで一度、これまで35年間の経験と、

創業以来、多くの企業や働く人たちと向き合う中で培ってきた知見を整理し、

ホスピタリティを企業経営に生かす考え方を、ひとつの体系として示したい。

そう考えました。

                                                                                            

それが、

「THTホスピタリティ・マネジメントシステム」

です。

                                                                                          

THTとは、私たちザ・ホスピタリティチーム(THT)の頭文字です。

                                                                                            

この連載では、ホスピタリティを「おもてなし」や「接客サービス」だけのものとして捉えるのではなく、

人と人とのより良い関係を土台に、人の価値を高め、その力を顧客への価値、

企業・社会への価値へとつなげ、持続的な成長の好循環を生み出していく。

そんな「ホスピタリティを経営の力にする」という考え方を、全24回にわたってお伝えしていきます。

ぜひ、24回の旅にお付き合いいただければ幸いです。

                                                                                            

■なぜ今、企業経営に「ホスピタリティ」が必要なのか

企業の経営者や管理職の方々とお話ししていると、近年、このような悩みを聞く機会が本当に増えました。

「人が採用できない、定着しない」

「若手がなかなか育たない」

「言われたことはやるが、自ら考えて動いてくれない」

「管理職が疲弊している」

「部署間の連携がうまくいかない」

「職場の人間関係がぎくしゃくしている」

制度を整える。

評価制度を見直す。

業務を効率化する。

DXを進める。

管理職研修を実施する。

                                                                                           

企業はこれまでも、さまざまな方法で人と組織の課題を解決し、生産性を高めようとしてきました。

それでも、なぜ「人」の問題はなくならないのでしょうか。

                                                                                          

私は、その大きな理由のひとつが、これまでの企業経営が「業務」や「仕組み」を管理することには力を注いできた一方で、

人と人との「関係性」を十分にマネジメントしてこなかったこと

にあると考えています。

                                                                                           

人は、制度や指示だけで動く存在ではありません。

「自分は大切にされている」

「ここなら安心して意見を言える」

「自分の仕事が誰かの役に立っている」

「この仲間と一緒に頑張りたい」

「この仕事に誇りを持てる」

こうした感情が、一人ひとりの主体性や貢献意識を引き出していきます。

そして、その土台となるのが、

人と人とのより良い関係性です。

                                                                                          

その関係性をつくる力として、私たちTHTが注目しているのが、

「ホスピタリティ」

なのです。

                                                                                               

■ホスピタリティは「接客」だけのものではない

ホスピタリティという言葉を使うと、

「お客様へのおもてなしですよね」

「ホテルやサービス業に必要なものでしょう」

と言われることがあります。

もちろん、それもホスピタリティの大切な一面です。

                                                                                            

しかし、ホスピタリティは、お客様に向けるだけのものではありません。

上司から部下へ。

部下から上司へ。

同僚から同僚へ。

部署から部署へ。

企業から顧客へ。

そして、企業から地域や社会へ。

人と人が関わるあらゆる場面に、ホスピタリティは存在します。

私たちTHTは、ホスピタリティをこう捉えています。

ホスピタリティとは、「互いの喜びを生み出す、人と人との基本姿勢・行動」である。

相手を尊重する。

相手の立場に立って考える。

相手に何が必要なのかを想像する。

そして、

「自分に何ができるだろう?」

と考え、自ら行動する。

                                                                                             

その行動が相手への貢献となり、相手の喜びが、自分自身の喜びややりがい、誇りにもつながっていく。

つまり、一方的に相手のために尽くす「自己犠牲」ではありません。

相手も喜び、自分も喜ぶ。

そこに、私たちTHTが考えるホスピタリティの本質があります。

                                                                                              

■「管理する」だけでは、人の価値は最大化できない

企業経営において、マネジメントは欠かせません。

目標を設定する。

役割を決める。

進捗を管理する。

成果を評価する。

これらは、組織が成果を上げるために必要です。

                                                                                            

しかし、人は「管理」されるだけで、その能力を最大限に発揮できるわけではありません。

なぜなら、人にはそれぞれ異なる価値観があるからです。

何にやりがいを感じるのか。

何を大切にして働いているのか。

どのような関わりによって意欲が高まるのか。

どのような環境で、その人らしい力を発揮できるのか。

それは、一人ひとり違います。

だからこそ、これからのマネジメントには、

「人をどう動かすか」だけではなく、「その人をどう理解するか」という視点

が必要になります。

                                                                                             

そして、相手を理解したうえで、その人が持つ力を発揮できるように関わり、環境をつくっていく。

「人を管理する」のではなく、
「人を理解し、その人が力を発揮できる関係と環境をつくる」。

ここに、ホスピタリティが大きな役割を果たします。

                                                                                           

もちろん、報酬や待遇、専門性、キャリア、成長、自己実現など、

人が働く意味や魅力を決める要素はほかにもあります。

ホスピタリティだけですべての経営課題を解決できるわけではありません。

                                                                                           

私たちTHTが注目しているのは、

人は、人との関係の中で力を発揮し、自分の仕事が誰かの役に立っているという「貢献実感」によって、

仕事の意味ややりがい、誇りを感じる

という側面です。

                                                                                              

人と人とのより良い関係をつくる。

その中で、一人ひとりが持つ力を発揮する。

その力を、誰かへの価値につなげていく。

それが、ホスピタリティによって「人の価値を高める」ということです。

                                                                                            

■テクノロジーが進化するほど、「人にしか生み出せない価値」が問われる

そして今、この考え方が重要になっているもうひとつの理由が、AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化です。

情報収集、分析、資料作成、定型業務など、これまで人が担ってきた仕事の多くを、AIやテクノロジーが担う時代になりました。

では、そんな時代に、人にはどのような価値が求められるのでしょうか。

相手の気持ちを察する。

その人の背景や状況を理解する。

相手に合わせて関わり方を変える。

誰かのために、自分に何ができるかを考える。

人を勇気づける。

人と人をつなぐ。

互いの力を生かしながら、新しい価値を共につくる。

                                                                                                      

私は、テクノロジーが進化するほど、こうした人と人との関係の中で生まれる価値が、より重要になると考えています。

だからこそ、

テクノロジーと共存する時代には、ホスピタリティが必要になる。

そして企業には、人にしか生み出せない価値を、一人ひとりの力だけで終わらせるのではなく、

組織の力、顧客への価値、企業・社会への価値へとつなげていくマネジメント

が求められるのです。

                                                                                                                                    

■THTが考える「ホスピタリティ・マネジメント」とは?

THTでは、企業におけるホスピタリティを、大きく3つの領域で捉えています。

① INNER HOSPITALITY|インナー・ホスピタリティ

― 人の価値を高める ―

まず土台となるのが、働く人同士のホスピタリティです。

互いを尊重する。

認め合う。

相手を理解する。

支え合う。

相手が力を発揮できるように関わる。

こうした関係性を通じて、一人ひとりが安心して力を発揮し、自ら考え、自ら動き、仕事へのやりがいや誇りを高めていく。

これが、THTの考えるインナー・ホスピタリティです。

                                                                                               

② CUSTOMER HOSPITALITY|カスタマー・ホスピタリティ

― 顧客への価値を高める ―

一人ひとりが持つ力を、今度は顧客への価値へつなげます。

目の前のお客様の状況や気持ちを理解し、

「このお客様に、今、自分に何ができるだろう?」

と考え、自ら行動する。

                                                                                            

マニュアルや決められたサービスだけではなく、そのお客様一人ひとりに合わせた、人にしか提供できない付加価値を生み出す。

これが、カスタマー・ホスピタリティです。

その積み重ねが、

「また来たい」
「またお願いしたい」

という顧客体験を生み、企業の「選ばれる理由」へつながっていきます。

                                                                                            

③ SOCIAL HOSPITALITY|ソーシャル・ホスピタリティ

― 企業・社会への価値を高める ―

そして、日々の仕事を、さらにその先にある企業・社会への価値へつなげていきます。

「私は何のために、この仕事をしているのか」

「私たちの会社は、何のために存在しているのか」

自分の仕事の意味を考え、企業の理念・ミッション・存在意義を理解し、

それを自分たちの仕事における「現場の共通目的」として共有する。

                                                                                             

そして、その目的を行動指針や日々の商品・サービスとして体現し、

自社らしい価値を顧客・地域・社会へ届けていく。

これが、THTの考えるソーシャル・ホスピタリティです。

その積み重ねが、企業への信頼や共感、ブランドを育み、

社会から必要とされ続ける企業へとつながっていきます。

                                                                                               

                                                                                              

■ホスピタリティで、「人の価値」を企業の価値へつなげる

ここで大切なのは、

INNER(社内)、CUSTOMER(顧客)、SOCIAL(社会)を、別々の活動として考えないことです。

INNER HOSPITALITY(社内ホスピタリティ)

人の価値を高める

CUSTOMER HOSPITALITY(顧客ホスピタリティ)

顧客への価値を高める

SOCIAL HOSPITALITY(社会ホスピタリティ)

企業・社会への価値を高める

人と人とのより良い関係によって、一人ひとりが持つ力が引き出される。

その人が相手や顧客を想い、「自分に何ができるか」を考えるようになる。

その気づきが行動となり、顧客への付加価値となる。

そして、その企業らしい価値の積み重ねが、企業への信頼やブランド、社会への価値につながっていく。

さらに、そこで生まれた成果を再び、人や職場、顧客、社会へ還元することで、次の成長が生まれる。

                                                                                               

私たちは、この循環を生み出していくことが、ホスピタリティ・マネジメントだと考えています。

                                                        

つまり、THTホスピタリティ・マネジメントとは、

ホスピタリティによって「人の価値」を高め、その力を「顧客への価値」、

そして「企業・社会への価値」へとつなげ、持続的な成長の好循環を生み出すマネジメント

なのです。

                                                                                           

■すべての企業が、同じところから始める必要はない

ただし、ここでひとつ大切なことがあります。

すべての企業が、必ずINNERから始めなければならないわけではありません。

                                                                                          

すでに良好な人間関係や組織文化がある企業であれば、CUSTOMERから始めてもいい。

顧客満足度は高いものの、理念や自社らしさが現場の仕事につながっていないのであれば、

SOCIALを高めることが必要かもしれません。

                                                                                          

大切なのは、

自社の現在地を知り、今必要な領域から始めること。

そして、それぞれの領域を一過性の取り組みで終わらせず、

一人ひとりの意識・行動
→ チームの習慣
→ 組織の文化

へと育てていくことです。

                                                                                            

ホスピタリティを一部の「できる人」のファインプレーで終わらせず、組織の力に変えていく。

そこまで含めて、THTホスピタリティ・マネジメントだと考えています。

                                                                                             

■THTホスピタリティ・マネジメントシステム|全24回

この連載では、ホスピタリティを単なる理念や精神論で終わらせず、

「人」「顧客」「企業・社会」「経営成果」

という視点から、全24回にわたって掘り下げていきます。

                                                                                              

第Ⅰ章|なぜ今、ホスピタリティなのか

Vol.01|企業経営にホスピタリティが必要なのか?

Vol.02|経済合理性だけでは、人が動かない時代になった

Vol.03|AI時代、人にしか生み出せない価値とは何か?

Vol.04|ホスピタリティを「おもてなし」から「経営」へ

                                                                                             

第Ⅱ章|人と人との「関係」を経営資源にする

Vol.05|なぜ「関係の質」が組織の成果を左右するのか?

Vol.06|心理的安全性が高いだけでは、強い組織にならない

Vol.07|人は、なぜ「自ら動きたくなる」のか?

Vol.08|「何のために働くのか」が人を強くする

                                                                                              

第Ⅲ章|インナー・ホスピタリティ

― 人の価値を高める ―

Vol.09|インナー・ホスピタリティとは何か?

Vol.10|「やらされる組織」と「自ら動く組織」は何が違うのか?

Vol.11|人が育つ組織には、どんな特徴があるのか?

Vol.12|個人の力を「組織の力」に変えるホスピタリティ

                                                                                             

第Ⅳ章|カスタマー・ホスピタリティ

― 顧客への価値を高める ―

Vol.13|なぜ社員へのホスピタリティが、顧客へのホスピタリティにつながるのか?

Vol.14|カスタマー・ホスピタリティとは何か?

Vol.15|マニュアルを超えるサービスは、なぜ生まれるのか?

Vol.16|仕事への「やりがい」と「誇り」を、顧客への価値につなげるには?

                                                                                                

第Ⅴ章|ソーシャル・ホスピタリティ

― 企業・社会への価値を高める ―

Vol.17|これからの企業価値は「どれだけ儲けたか」だけでは測れない

Vol.18|ソーシャル・ホスピタリティとは何か?

Vol.19|企業理念を「現場の共通目的」に変えるには?

Vol.20|社会から「必要とされ続ける企業」は何が違うのか?

                                                                                              

第Ⅵ章|ホスピタリティを経営成果につなげる

― 人・顧客・企業・社会への価値を、持続的な成長へ ―

Vol.21|社員の「幸せ」は、企業の業績につながるのか?

Vol.22|顧客へのホスピタリティを「選ばれる理由」に変えるには?

Vol.23|企業・社会への価値を「企業価値」に変えるには?

そして最終回。

Vol.24|THTホスピタリティ・マネジメントシステム
― 人・顧客・企業・社会をつなぐ経営の好循環 ―

                                                                                              

■24回を通じて伝えたいこと

この24回を通じて私が伝えたいのは、決して「人に優しくすれば会社はうまくいく」ということではありません。

人を大切にすれば、業績は二の次でいい、ということでもありません。

                                                                                            

私たちが目指しているのは、

ホスピタリティで、人の価値を高める。

人の価値が、顧客への価値を高める。

顧客への価値が、企業・社会への価値を高める。

そして、その結果として企業が成長し、生まれた成果が再び、人・顧客・社会へ還元されていく。

そんな好循環です。

                                                                                               

人と人との関係が変われば、思考が変わる。

思考が変われば、行動が変わる。

行動が変われば、結果が変わる。

そして、良い結果が次の良い関係を生み出していく。

この好循環を、企業経営の中につくる。

それが、私たちザ・ホスピタリティチームが提唱する、

「THTホスピタリティ・マネジメントシステム」

です。

                                                                                               

AIをはじめとするテクノロジーが進化し、仕事のあり方が大きく変わるこれからの時代。

だからこそ企業には、「人にしか生み出せない価値」を最大限に引き出し、

それを顧客、企業、社会への価値へとつなげていく経営が求められます。

そして私は、その中心にホスピタリティがあると考えています。                                                                                              

                                                                                    

ホスピタリティを「おもてなし」から「経営の力」へ。

ここから24回をかけて、その考え方を一つひとつ紐解いていきます。

                                                                                              

次回Vol.01は、

「なぜ今、企業経営にホスピタリティが必要なのか?」

AIやテクノロジーの進化、働き方や価値観の変化の中で、なぜ今、企業経営にホスピタリティが求められているのか。

その背景から考えていきます。

                                                                                              

ザ・ホスピタリティチーム株式会社
代表取締役/ホスピタリティコンサルタント
船坂 光弘

 

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