■豊かになったはずなのに、なぜ幸せになれないのか
近年、「人的資本経営」や「ウェルビーイング経営」といった言葉を耳にする機会が増えました。
企業にとって、働く人の幸福度やエンゲージメントが重要な経営課題として認識されるようになったからです。
しかし、私たちの職場は本当に幸福になっているのでしょうか。
戦後の日本は高度経済成長期を迎えました。
当時は今よりも労働時間が長く、決して働きやすい環境だったとは言えません。
それでも、多くの人が未来に希望を持っていました。
頑張れば給料が上がる。
頑張れば会社が成長する。
頑張れば日本が豊かになる。
そんな共通の希望が社会全体にありました。
一方、現代はどうでしょうか。
給与水準は上がり、休日も増えました。
働き方改革によって長時間労働は見直され、ブラック企業も以前より減少しています。
生活環境だけを見れば、私たちは確実に豊かになっています。
それにもかかわらず、「働く幸せ」が高まっているかというと、私は少し疑問を感じています。
職場を見渡すと、未来への期待に胸を膨らませながら働く人よりも、
成果や評価に追われながら働く人の姿が目につくからです。
数字が良ければ喜び、悪ければ落ち込む。
評価が上がれば安心し、下がれば不安になる。
気づけば、多くの人が成果に一喜一憂する働き方に疲れてしまっているように感じます。
■成果主義そのものが悪いわけではない
ここで誤解していただきたくないのは、私は成果主義を否定したいわけではありません。
企業は利益を生み出さなければ存続できません。
売上や利益がなければ、従業員の雇用も守れません。
私自身も経営者ですので、その重要性は十分理解しています。
成果を追求することは必要です。
しかし、問題は「成果を追うこと」ではなく、「成果だけを見ること」です。
いつの間にか、
「いくら売れたか」
「目標を達成したか」
「数字が伸びたか」
ばかりが評価基準になってしまうと、人は結果に支配されるようになります。
そして結果が出ないと、自分自身の価値まで否定されたような気持ちになってしまいます。
本来、成果とは仕事の目的ではなく、仕事の結果として生まれるものです。
しかし多くの職場では、結果が目的化してしまっているように感じます。
■VUCA時代は結果をコントロールできない
高度経済成長期と現代の大きな違いは、「結果の出やすさ」です。
当時は努力と成果が比較的結びつきやすい時代でした。
しかし今は違います。
VUCA(ブーカ)時代と言われるように、未来は不確実性に満ちています。
感染症の流行。
異常気象。
物価高騰。
人手不足。
為替変動。
国際情勢の変化。
どれだけ努力しても、自社だけではどうにもならない要因が数多く存在します。
極端な話、お客様が来店するかどうかさえ、天候によって変わることがあります。
もちろん成果を目指すことは大切です。
しかし、その成果は自分たちだけでは完全にコントロールできません。
コントロールできないものばかりに意識を向け続ければ、人は不安になります。
そして不安は余裕を奪います。
余裕がなくなれば、人に優しくできなくなります。
職場がギスギスし始めるのも、このような背景があるのかもしれません。
■だからこそ「貢献」に目を向ける
では、私たちは何に目を向ければよいのでしょうか。
私は、「結果」ではなく「貢献」だと思っています。
結果はコントロールできません。
しかし、貢献はコントロールできます。
お客様に笑顔で接すること。
困っている同僚に声を掛けること。
後輩を励ますこと。
感謝の言葉を伝えること。
期待を少し超える行動をすること。
これらは、今日からでも実践できます。
そして、その行動は確実に誰かの喜びや幸せにつながります。
例えば、
お客様から「ありがとう」と言われた。
「また来るね」と言っていただけた。
後輩が成長した。
仲間から感謝された。
こうした出来事は売上報告書には載りません。
しかし、働く人の心を満たしてくれる大切な成功体験です。
私は、働く幸せとはこうした日々の小さな成功体験の積み重ねだと思っています。
■日本人が本来持っている強み
実は、この考え方は日本人にとても合っています。
日本には昔から、
「おかげさま」
「お互いさま」
という文化があります。
自分だけが良ければいいのではなく、周囲との調和を大切にする価値観です。
また、日本のおもてなし文化は世界中から高く評価されています。
相手が求めていることを察する。
相手の立場になって考える。
相手の喜びを自分の喜びとして感じる。
こうした価値観は、日本人が長い歴史の中で育んできた大きな強みです。
私はこれをホスピタリティの力だと考えています。
ホスピタリティとは単なる親切ではありません。
相手の幸せや喜びに貢献しようとする姿勢そのものです。
そして不思議なことに、人は誰かの役に立ったと感じたとき、自分自身も幸せを感じます。
だからこそ、貢献を大切にする働き方は、日本人らしい働き方でもあるのです。
■貢献を称賛する文化が組織を変える
もし職場で、
売上だけが評価されるのではなく、
お客様に喜ばれた行動が共有される。
仲間を助けた行動が称賛される。
感謝の言葉が飛び交う。
そんな文化が広がったらどうでしょうか。
職場の空気は大きく変わるはずです。
人は認められた行動を繰り返します。
貢献が認められる職場では、自然と貢献行動が増えていきます。
すると人間関係が良くなります。
働きやすさが向上します。
主体性が高まります。
その結果として、お客様満足や業績向上につながっていくのです。
つまり、成果は貢献の延長線上にあると言えるのです。
■成功する組織は結果の前に関係性を見る
この考え方は、組織開発の第一人者であるダニエル・キム氏の「成功の循環モデル」とも一致します。
多くの組織は成果を上げようとして、まず行動を変えようとします。
しかしダニエル・キム氏は、
関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質
という順番が重要だと提唱しています。
つまり、最初に改善すべきは「関係の質」なのです。
信頼関係がある職場では、安心して意見を言えます。
安心して挑戦できます。
助け合いも生まれます。
すると思考が前向きになり、自発的な行動が増えます。
その結果として成果が生まれるのです。
私はこれまで数多くの企業を見てきましたが、長期的に成果を出し続ける組織ほど、人間関係や貢献を大切にしています。
数字だけを見ている組織ではありません。
数字の前に人を見ています。
結果の前に貢献を見ています。
だからこそ、成果が生まれるのです。
■結果は追うものではなく、ついてくるもの
これからの時代に必要なのは、
「どうすれば数字が上がるか」
だけではありません。
「誰の幸せに貢献できるか」
という視点です。
日々の貢献に目を向ける。
その貢献を認め合う。
そして、その積み重ねが結果につながることを信じる。
私は、この考え方こそが働く人のやりがいを生み、主体性を高め、生産性向上につながると考えています。
職場が殺伐としやすい今の時代だからこそ、結果だけではなく、貢献を称賛する文化を育てていきたいものです。
それが働く人を幸せにし、企業を元気にし、そして日本を元気にする第一歩になるのではないでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございます
弊社では、こうした「貢献を称賛する文化づくり」や「関係の質向上」をテーマとしたヒューマンスキル向上ホスピタリティ研修を実施しております。
傾聴力、承認力、心理的安全性、世代間コミュニケーション、リーダーシップなど、
人と人との関係性を高めるスキルを体系的に学びながら、働く人の幸福度と組織成果の両立を目指します。
AIやDXが進化する時代だからこそ、最後に差を生むのは人間力です。
知識や技術だけではなく、人を思いやり、人の可能性を引き出し、人の成長を支援する力が、
これからますます重要になっていくでしょう。
ホスピタリティを土台とした組織づくりにご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
ホスピタリティですべての働く人に喜びと誇りを。
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