先日、一冊の本を読んでいて、とても心に残る言葉に出会いました。
「成功したければ望むものを手に入れるがよい。幸せになりたければ、いまあるものを楽しむがよい。」
哲学者ショーペンハウアーの言葉です。
短い一文ですが、今の時代の働き方を考える上で、とても大切な示唆があるように感じました。
昔は、「仕事で成功すること」が、多くの人にとって人生の目標でした。
出世したい。
もっと稼ぎたい。
いい車に乗りたい。
大きな家に住みたい。
社会的な地位や名誉を手に入れたい。
そのために必死に働き、競争に勝つことが成功への道だと考えられていました。
もちろん、その考え方が間違っているわけではありません。
目標を持ち、努力を重ねることは、人を成長させる大きな原動力になります。
しかし、時代は少しずつ変わってきました。
物質的には豊かになり、価値観も多様化した今、多くの人が求めるものは、「もっと持つこと」だけではなくなっています。
「自分らしく働きたい。」
「誰かの役に立ちたい。」
「仕事を通して成長したい。」
「毎日を楽しく過ごしたい。」
そんな精神的な充足を求める人が増えてきました。
つまり、「成功」の定義そのものが、人によって違う時代になったのです。
■「成功」の形が違うからこそ、すれ違いが生まれる
だからこそ、職場にはさまざまな価値観が混在します。
・出世したい人もいる。
・家庭を大切にしたい人もいる。
・専門性を磨きたい人もいる。
・人の役に立つことを喜びに感じる人もいる。
本来であれば、それは組織の強みになるはずです。
ところが、自分の価値観だけを基準に相手を見ると、そこに摩擦が生まれます。
「もっと頑張ればいいのに。」
「なんでそんなに仕事ばかりなんだろう。」
「会社は評価してくれない。」
「あの人ばかり優遇されている。」
自分の欲求が満たされない理由を、会社や上司、周囲に求め始めると、人間関係は少しずつギクシャクしていきます。
しかし、本当に大切なのは、価値観を揃えることではありません。
違う価値観を持った人同士が、お互いを理解し、尊重しながら働ける環境をつくることなのです。
■「いまあるものを楽しむ」という選択
ショーペンハウアーの言葉は、そんな私たちに、もう一つの視点を教えてくれているように思います。
「いまあるものを楽しむ。」
この考え方です。
もちろん、向上心を持たなくていいという意味ではありません。
・未来に目標を持ちながらも、「今日」という一日を楽しむ。
・一緒に働く仲間との会話を楽しむ。
・お客様からいただく「ありがとう」を楽しむ。
・昨日より少し成長できた自分を楽しむ。
仕事の中には、実は小さな幸せがたくさん隠れています。
ところが、人は足りないものばかりに目が向くと、それらを見失ってしまいます。
ホスピタリティも同じです。
ホスピタリティとは、「相手を喜ばせよう」という心ですが、その前提には、自分自身が心に余裕を持っていることがあります。
不満や不公平感ばかりを抱えている人は、相手に温かく接することが難しくなります。
反対に、今ある環境や仲間、仕事の価値を見つけられる人は、自然と周囲にも優しくなれます。
■ホスピタリティは、人と組織を幸せにする
その優しさは、職場の空気を変えます。
・「ありがとう」が増える。
・相談しやすくなる。
・失敗を責めるより、一緒に改善を考えられる。
・笑顔が増える。
こうして「関係の質」が高まっていきます。
そして、関係の質が高まると、人は安心して考え、挑戦できるようになります。
誰かにやらされるのではなく、「自分からやってみよう」という主体性が生まれます。
その主体的な行動が増えることで、お客様へのサービスも変わります。
決められたことをこなすだけではなく、
「もっと喜んでもらえないかな。」
「この一言を添えてみよう。」
「困っているから声を掛けよう。」
そんな小さな行動が積み重なり、お客様の期待を超えるホスピタリティへとつながっていきます。
そして、その積み重ねが、お客様から選ばれる理由となり、組織の成果へと結び付いていくのです。
私は、これこそが「ホスピタリティの循環」だと思っています。
仕事は、成功を目指すことも大切です。
目標を持つことも素晴らしいことです。
でも、その過程で「今」を楽しめなくなってしまったら、本当の意味で豊かな人生とは言えないのかもしれません。
仕事は人生の多くの時間を占めます。
だからこそ、その時間を「我慢する時間」にするのではなく、「楽しめる時間」に変えていくことが、
自分自身の幸せにも、組織の成長にもつながるのではないでしょうか。
ショーペンハウアーのこの言葉は、決して「成功を諦めなさい」と言っているのではありません。
・未来を目指しながらも、今日という一日を大切にする。
・今ある仲間を大切にする。
・今ある仕事の価値を見つける。
その積み重ねこそが、人を幸せにし、結果として組織を強くしていくのだと思います。
ホスピタリティとは、特別な接客技術ではありません。
「今、この瞬間を大切にし、目の前の人を大切にする心。」
その心が、自分を幸せにし、周りを幸せにし、やがて会社全体を前向きな組織へと育てていくのです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ザ・ホスピタリティチーム株式会社では、このような価値観が多様化する時代だからこそ、
人と人との「関係の質」を高めることが、組織づくりの土台になると考えています。
私たちが実施している「インナー・ホスピタリティ向上研修」では、
一人ひとりの価値観や働く目的を尊重しながら、お互いを思いやる風土を育み、
自発性とチームワークを引き出す組織づくりをご支援しています。
人は、会社のためだけでは動きません。
しかし、「この仲間と働けてよかった」「この職場で働くことが楽しい」と感じられたとき、人は自ら考え、自ら行動し始めます。
ホスピタリティとは、お客様へのおもてなしだけではなく、共に働く仲間への思いやりから始まるもの。
私たちはこれからも、「ホスピタリティですべての働く人に喜びと誇りを。」という理念のもと、
人が幸せに働ける組織づくりを全国の企業の皆さまと共に実践してまいります。
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