「また会社が変なことを始めたよ」
「どうせ、うまくいかないと思いますけどね」
「現場のことを何も分かっていないですよね」
会社が新しい方針を打ち出したり、部署で新たな取り組みを始めようとしたりすると、
必ずと言っていいほど、このような否定的な言葉を口にする人がいます。
リーダーとしては、頭の痛い問題です。
前向きに進めたいのに、その人のひと言でチームの空気が重くなる。
丁寧に説明しても納得しない。周囲にも不満を漏らし、
場合によっては「あの人がいるから改革が進まない」という状況になることさえあります。
では、そんな部下に対して、リーダーはどう向き合えばよいのでしょうか。
■「この部署にいらない部下はひとりもいない」
私がリーダーをしていた頃から大切にしている考え方があります。
それは、
「この部署にいらない部下はひとりもいない」
ということです。
自分の部下になってくれた以上、その人との出会いにも意味がある。
素直で何でも前向きに取り組んでくれる部下だけが、自分の部下になるわけではありません。
反発する人もいる。
批判する人もいる。
なかなか動いてくれない人もいる。
しかし、そういう部下を持ったこと自体が、リーダーとしての自分を成長させる研さんの機会だと私は考えています。
「言うことを聞かないからダメな部下」と切り捨てるのは簡単です。
しかし、「どうすれば、この人が前向きに働けるだろう」「何がこの人を頑なにさせているのだろう」と考え、関わり続ける。
それもリーダーの大切な役割です。
■批判的な意見には、意味があることもある
そもそも、会社の方針に反対する部下が、必ずしも間違っているとは限りません。
現場をよく知っているからこそ見える問題点もあります。
過去の経験から「このやり方では失敗する」と感じているのかもしれません。
あるいは、新しい方針そのものではなく、
「なぜやるのか分からない」
「自分たちの意見を聞いてもらえなかった」
というプロセスに不満を感じている場合もあります。
だからこそ、リーダーには「聴く耳」が必要です。
「会社が決めたんだから黙ってやれ」
これでは、人は動いたとしても、主体的には動きません。
反対意見にも耳を傾け、そこに活かせるものがあれば取り入れる。
一人では見えないものを、みんなの知恵によってより良いものにしていく。
これは「集合知」を活かすという意味でも重要です。
しかし、ここでリーダーが陥りやすい落とし穴があります。
■「意見を聞くこと」と「迎合すること」は違う
反対する人の意見を聞いているうちに、
「そこまで言うなら、この辺で妥協しよう」
「全員が納得するまで待とう」
「反発が出ない程度に変えよう」
となってしまうことがあります。
一見すると、民主的で良いリーダーに見えます。
しかし、その結果、本来必要だった改革が中途半端になったり、
意思決定のスピードが遅れたりしてしまえば、本末転倒です。
特に注意したいのは、一番強く反対する人に組織全体が振り回されることです。
十人のうち九人が前を向いているのに、一人が強く反対しているために何も決められない。
それでは、前向きに取り組もうとしている九人の気持ちまで失わせてしまいます。
リーダーには、部下の声を聞く「柔らかさ」と同時に、最後は決める「強さ」が必要なのです。
■最後に問うべきは、「誰のためなのか」
では、どこまで部下の意見を聞き、どこから信念を貫けばよいのでしょうか。
私は、その判断基準は、
「それは誰のためなのか」
だと思っています。
自分の評価を上げたい。
自分のやり方を認めさせたい。
自分が正しいことを証明したい。
こうした「利己」が中心なら、立ち止まって考える必要があります。
しかし、
「この改革は、お客様のためになる」
「働く仲間の未来のために必要だ」
「この会社が社会にもっと貢献するために必要だ」
そう心から確信できるのであれば、最後はリーダーが信念を貫くことも必要です。
全員が納得することと、正しい方向に組織を導くことは、必ずしも同じではありません。
■「自分ひとりでもやる」という覚悟
改革を進めようとすると、ときに厳しい局面があります。
「そんなことをするなら辞めます」
そう言われることもあるかもしれません。
もちろん、退職者を出すことが良いわけではありません。
最後まで対話し、理解してもらう努力は必要です。
それでも、どうしても考えが一致しないことはあります。
そんなときにリーダー自身が、
「それでも必要なことだから、自分ひとりになってもやる」
という覚悟を持てるか。
私は、そこにリーダーシップが表れると思っています。
不思議なもので、リーダーが腹をくくり、本気で進もうとする姿を見せたことで、
それまで反対していた人の態度が変わることもあります。
人は、言葉だけでなく、その人の「覚悟」を見ています。
■ホスピタリティは「優しくすること」ではない
ここで大切になるのが、ホスピタリティです。
ホスピタリティというと、「相手を尊重する」「相手に寄り添う」といった優しいイメージを持つ人が多いかもしれません。
もちろん、それも大切です。
しかし、本当のホスピタリティは、相手に迎合することではありません。
私はホスピタリティの本質のひとつを、
「自分の貢献を相手の喜びに変え、それを自分の力に変えること」
だと考えています。
だからリーダーも、「反対する部下をどう従わせるか」ではなく、
「この仕事によって、誰にどんな喜びを生み出したいのか」
という「貢献」に立ち返ることが重要です。
お客様への貢献。
仲間への貢献。
会社への貢献。
社会への貢献。
そこに軸を置けば、「自分の意見を通すか、部下の意見を聞くか」という対立から抜け出すことができます。
「どちらが正しいか」ではなく、
「どちらが、より良い貢献につながるのか」
で考えられるようになるからです。
■部下を見捨てない。でも、信念も捨てない
リーダーには、二つの覚悟が必要なのだと思います。
ひとつは、「部下を見捨てない覚悟」。
もうひとつは、「自分の信念を捨てない覚悟」です。
批判的な部下にも耳を傾ける。
その人が前向きになれるように、何度でも関わる。
その人の力をどうすれば組織に活かせるかを考える。
しかし、相手に合わせることで、本来進むべき方向まで曲げてはいけない。
対話を尽くしたうえで、最後は「誰のため、何のためなのか」という貢献の軸に立って決断する。
人を大切にすることと、決断することは、決して矛盾しません。
むしろ、人を大切にするからこそ、組織の未来に責任を持ち、決めなければならないことがあります。
「この部署にいらない部下はひとりもいない。」
そう信じて最後まで人に向き合う。
それでも必要なときには、
「自分ひとりでもやる」
と腹をくくる。
優しさと強さの両方を持つこと。
それが、これからの時代に求められる、ホスピタリティを軸としたリーダーシップなのではないでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回お伝えしたように、リーダーに求められるのは、単に部下を動かすことではありません。
一人ひとりの声に耳を傾け、その人の力を引き出しながらも、「誰のため、何のためなのか」という軸を持ち、
必要なときには信念を持って組織を前に進めることが求められます。
ザ・ホスピタリティチーム株式会社では、こうした「人を大切にすること」と「成果を生み出すこと」を両立するリーダーシップをテーマに、
「ホスピタリティ・リーダーシップ研修」を実施しています。
「部下がなかなか主体的に動いてくれない」
「部下との関わり方や育成に悩んでいる」
「管理職によってマネジメントにばらつきがある」
「もっとチームが一丸となって目標に向かえる組織をつくりたい」
このようなお悩みをお持ちの企業様に、ホスピタリティを軸としたリーダーのあり方や、
信頼関係の築き方、部下の主体性を引き出す具体的な関わり方をお伝えしています。
人を動かすのではなく、人が自ら動きたくなる組織へ。
リーダー育成や組織づくりに課題を感じていらっしゃいましたら、
ぜひお気軽にご相談ください。
ホスピタリティですべての働く人に喜びと誇りを。
ザ・ホスピタリティチーム株式会社
代表取締役/ホスピタリティコンサルタント
船坂 光弘
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