「リーダーになりたくてなったわけじゃない。」
これまで数多くの企業で研修を行ってきましたが、
そんな本音を口にするリーダーの方とたくさん出会ってきました。
長年現場で経験を積み、一通りの仕事はできるようになった。
上司の異動や退職をきっかけに、「次は君だ」と言われ、気が付けばリーダーになっていた。
しかし、人を育てることも、チームをまとめることも教わったことはありません。
「自分にはリーダーとしての才能がないのではないか。」
「プレーヤーとしては自信があったのに、リーダーになるとうまくいかない。」
そんな悩みを抱えている方は決して少なくありません。
経営学には「ピーターの法則」という有名な考え方があります。
人は現在の仕事で成果を出すと昇進し、やがて自分の能力では十分に力を発揮できない役職に就き、
その役職で昇進が止まるという法則です。
この考え方だけを聞くと少し厳しく感じますが、私は少し違う見方をしています。
人は役職が変わると能力がなくなるのではありません。
求められる能力が変わるだけなのです。
プレーヤーに求められるのは、自分が成果を出す力。
一方、リーダーに求められるのは、メンバーが成果を出せる環境をつくる力です。
つまり、仕事そのものがまったく違うのです。
■自分らしいリーダーシップを見つける
リーダーになると、「こうあるべき」という理想像に縛られてしまう人がいます。
・強く引っ張るリーダーにならなければいけない。
・厳しく指導しなければいけない。
・何でも知っていて、何でもできなければいけない。
しかし、本当にそうでしょうか。
周囲を力強く引っ張る人もリーダーです。
優しく寄り添いながら支える人もリーダーです。
職場を明るくする人も、話をじっくり聴くことが得意な人も、立派なリーダーです。
大切なのは、誰かの真似をすることではありません。
自分の強みを活かした「自分らしいリーダーシップ」を見つけることです。
無理をして自分を演じ続ければ、いつか苦しくなります。
自然体でいられるリーダーほど、周囲も安心してついていくものです。
■リーダーの最初の仕事は「関係の質」を高めること
それでは、リーダーになって最初に何をすればよいのでしょうか。
私は、仕事の知識や管理能力を身につける前に、まず部下との「関係の質」を高めることだと考えています。
私が提唱するホスピタリティ・リーダーシップとは、部下への「目配り・気配り・心配り」を通して、
一人ひとりの心を満たし、心理的安全性を高めるリーダーシップです。
これは特別な才能ではありません。
誰でも今日から実践できることです。
例えば、目配り。
「昨日は遅くまで残業してくれてありがとう。」
その一言だけで、部下は「ちゃんと見てもらえていた」と感じます。
次に気配り。
「最近、仕事が増えているみたいだけど大丈夫?何か手伝えることがあったら言ってね。」
部下は、自分を理解しようとしてくれていることに安心感を覚えます。
そして心配り。
「暑い中、外回りお疲れさま。体調には気を付けてね。」
こうしたちょっとした言葉でも、「自分は大切にされている」と感じるものです。
こうした日々の積み重ねが、心理的安全性を生み出します。
心理的安全性が高まれば、部下は安心して発言し、自分の考えを伝え、挑戦するようになります。
つまり、関係の質が高まることで思考の質が変わり、自発的な行動が生まれ、結果として成果につながるのです。
これは、私が研修でもお伝えしている成功循環モデルそのものです。
■「無能な部下」は存在しない
もう一つ、リーダーに知っておいてほしいことがあります。
それは、「無能な部下」をつくらないという視点です。
最近、「頑張るは楽しむに勝てない」という言葉を耳にすることがあります。
以前は、「苦しい仕事だから給料をもらえる」という考え方が一般的でした。
しかし今は違います。
楽しみながら主体的に働く人ほど、生産性が高いことがさまざまな研究でも明らかになっています。
それでは、どうすれば部下は仕事を楽しめるのでしょうか。
そのヒントは、一人ひとりの強みを活かした役割をつくることです。
例えば、人と関わることが好きな人には、コミュニケーション係として職場イベントの企画を任せてみる。
数字が得意な人には、データ管理や数値の見える化を担当してもらう。
整理整頓が好きな人には、美化活動や5S推進を任せる。
SNSが得意なら情報発信、新人のお世話が好きなら育成担当など、通常業務以外にも、
その人が貢献できる場はたくさんあります。
役割を与えることは、仕事を増やすことではありません。
「あなたに期待しているよ」というメッセージを伝えることです。
人は、自分の強みを発揮し、誰かの役に立てたと感じたときに、喜びや誇りを感じます。
そして、その積み重ねが主体性を育み、チーム全体の力を高めていくのです。
■リーダーは完璧である必要はない
リーダーは何でもできなければいけない。
そう思っている人ほど苦しくなります。
しかし、本当に目指すべき姿は、完璧なリーダーではありません。
メンバーの強みを信じ、権限を委譲し、それぞれが活躍できる環境をつくるリーダーです。
自分の苦手なことを、得意な部下に任せる。
それは弱さではなく、チームを信じる強さです。
人は役職が変わると能力がなくなるのではありません。
求められる能力が変わるのです。
そして同じように、部下も能力がないのではありません。
強みを発揮できる役割と、力を発揮できる関わり方が、まだ見つかっていないだけなのです。
リーダーの仕事とは、自分一人で成果を出すことではありません。
一人ひとりの可能性を信じ、その人が安心して力を発揮できる環境をつくること。
それこそが、私が考える「ホスピタリティ・リーダーシップ」の本質です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
リーダーシップは、生まれ持った才能ではなく、日々の関わり方によって育まれる力です。
だからこそ、誰にでも実践でき、誰にでも成長する可能性があります。
ザ・ホスピタリティチーム株式会社では、管理職・リーダー層を対象とした「ホスピタリティ・リーダーシップ研修」を通じて、
心理的安全性の高い組織づくりや、自発性を引き出すマネジメントを支援しています。
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