2025.05.16
マネジメントコラム
ホテル・旅館の口コミ評価4.5の壁を超えるための最重要ポイント!~宿泊業の口コミポイントの高め方~
「また来たい」と思える旅館やホテルには、ある共通点があります。
それは、“空気感”が心地よいこと。
料理や建物の豪華さを超えて、最後に印象に残るのは“人”の存在――つまりスタッフの接客です。
私はこれまで多くの旅館・ホテルに宿泊したり、研修、コンサルティング等で関わってきましたが、
OTA(じゃらん・楽天トラベルなど)で4.5点以上の高評価を獲得している施設には共通する要素があると感じています。
それは、ハード(設備)だけでは到達できない評価の壁を、ソフト(接客)の力で超えているということです。
実際、口コミ評価の高い旅館の中には、古い建物でエレベーターもなく、バリアフリーも不十分というような老舗もあります。
けれどもそこに“心地よさ”があるのは、
スタッフ一人ひとりの丁寧な振る舞いや、自然な笑顔、あたたかな言葉が空間にあふれているからです。
高評価の施設では、すれ違うたびに笑顔で「ごゆっくりどうぞ」と声をかけられたり、
会釈ひとつにも心がこもっていたりします。さらに素晴らしい場所では、立ち止まって挨拶をしてくれる場面もあります。
こうした些細な行動の積み重ねが、施設全体の“空気感”を醸成し、「また来たい」という気持ちにつながっているのです。
■ “不機嫌なスタッフ”はそれだけでマイナス評価に
反対に、どんなに料理が美味しく、客室が整っていても、
スタッフの中に一人でも“笑顔がない”“挨拶がない”“声が冷たい”スタッフがいると、それだけでお客様の印象は曇ります。
そして、それは確実に口コミ評価に影響します。
この“不機嫌そうな印象”は、怒っているという意味ではありません。
無表情、無言、視線を合わせない――これだけで、お客様は「歓迎されていない」と感じてしまうのです。
■ ストロークで心を満たす
ではどうすれば、お客様の心に残る空気感をつくれるのでしょうか?
そのカギが「ストローク」です。
ストロークとは、交流分析の用語で、相手の心に心地よさを与える言動のことをいいます。
たとえば、笑顔、アイコンタクト、ていねいなお辞儀、その人に合わせた一言――
「遠方よりお越しいただきありがとうございます」
「寒い中、お疲れさまでした」など、相手に合わせた思いやりの言葉は、心の栄養となります。
これらのストロークが随所にあることで、お客様は“気づいてもらえている”“大切にされている”と感じることができ、
結果的に滞在体験が心に残るものになるのです。
■ 文脈価値を伝えることで、モノが“意味”になる
さらに最近、特に重要だと感じるのが「文脈価値」の提供です。
これは、単に商品やサービスを提供するだけでなく、
それが持つ背景やストーリーを伝えることによって、価値を高めるアプローチです。
たとえば、九州のある旅館では、館内の装飾に地元の伝統工芸である竹細工が使われています。
ただの装飾として通り過ぎてしまえば気づかないものですが、
スタッフが「この竹細工はこの地域の伝統で…」と一言添えて案内してくれるだけで、
その場所の文化と技術が“心に残る価値”になります。
また、石川県の高級旅館では、かつて殿様が使用していたとされる茶室を館内に移築し、
チェックイン後に茶の湯体験ができます。
その前段で、スタッフが茶室の歴史や背景を語ってくれることで、
「ただのお茶体験」ではなく、「この地の歴史を感じる文化体験」へと価値が変化します。
静岡県のある旅館では、名物の鯛めしを提供する際、あらかじめ炊きあがったものを出すのではなく、
鯛の姿を見せてから炊き上げる演出を取り入れています。
お客様は視覚と香り、時間の流れとともに料理を待ち、期待とともに味わうことで、
ただの“ご飯”が“記憶に残る一品”になるのです。
このように、物理的なものに意味づけを加える=文脈を与えることで、提供価値は飛躍的に高まり、
結果的に口コミにも反映されていきます。
■ テクノロジーが発展する時代だからこそ、人にしかできない価値を
今、ホテル・旅館業界でも省人化や効率化のために、テクノロジー導入が進んでいます。
しかし、評価の高い旅館やホテルは、作業はテクノロジー、人の心を動かすのは“人”という役割分担がしっかりしています。
だからこそ、人がやるべき“ストローク”や“文脈価値の演出”に集中できる環境づくりが重要です。
「人が人に与える価値」は、どんなAIや自動化技術にも代替できません。
■ インナーホスピタリティの文化が、評価を底上げする
そしてすべての根幹にあるのは、心の栄養を満たす「ストローク」がお客様だけでなく、
職場内でも飛び交っているかどうかが重要です。
いくら接客マニュアルを整備しても、スタッフ同士の関係性がギスギスしていては、本物の笑顔はお客様には届かない。
「ありがとう」「おつかれさま」「大丈夫?」
こうした声が自然と交わされている職場には、笑顔と余裕があり、結果的にお客様への対応にも余裕が生まれる。
つまり、高評価のサービスは現場の“人間関係”から始まる。
「不機嫌なスタッフをつくらないこと」――これは、接客のスキル以前に、組織としての戦略です。
そのためには、個々のスタッフを責めるのではなく、インナーホスピタリティ=社内での思いやりや感謝の文化を育むことが
最優先となります。
最後に。
口コミ評価は“奇跡のサービス”ではなく、“当たり前の積み重ね”の結果です。
その“当たり前”をつくるために、まずはスタッフが笑顔で働ける空気を育てていきましょう!
それが、お客様の評価を確実に変えていく第一歩になります。
ザ・ホスピタリティチーム㈱では、接客力向上、サービス品質向上、組織づくり、チームビルディング、
心理的安全性向上、ホスピタリティに関する研修、コンサルティングのサービスを提供しておりますので、
お気軽にお問合せください。
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