2024.12.08
マネジメントコラム
サービス業におけるアンコンシャスバイアスとは?~顧客サービスとリーダーシップにおける思い込み克服術~
□ アンコンシャスバイアスとは?
「アンコンシャスバイアス」とは、日本語で「無意識の偏見」と訳される言葉です。
私たちが日常生活や仕事の中で瞬間的に判断を下す際に、自分でも気づかないうちに影響を受けている先入観や固定観念を指します。
これは、過去の経験、文化的背景、環境から形成されるものであり、
私たちが物事を効率的に処理するための「思考の近道」として機能しますが、時として判断を誤らせる原因にもなります。
たとえば、年齢、性別、国籍、外見などに基づく固定観念がアンコンシャスバイアスの典型的な例です。
これは、職場の意思決定やチーム運営、お客様への対応など、あらゆる場面で影響を及ぼします。
特にサービス業では、顧客満足や従業員満足に直結する場面が多いため、この「無意識の偏見」を無視することはできません。
□ 顧客サービスの視点でのアンコンシャスバイアス
サービス業における最大の目的は、顧客に満足や感動を提供することです。
しかし、アンコンシャスバイアスが顧客対応に入り込むと、無意識のうちに「偏った」サービスを提供してしまう可能性があります。
たとえば、高齢者のお客様に対して「複雑な説明は避けるべき」という思い込みから、
十分な情報を提供しないケースがあります。
また、外国籍のお客様に対し「英語を話すべき」と決めつけ、
日本語で話したほうが良い場面でも過剰に緊張してしまうこともあるでしょう。
私の前職、ホテルの婚礼支配人時代には、
部下でウェディングプランナーが、あるお客様から、
「プランナーが商品を提案してくれなかった」というクレームをいただきました。
担当プランナーに聞いたところ、
「金額にシビアなお客様だと思ったので、商品を勧めると金額が上がってしまうので、
必要最低限の商品しかお勧めしなかった。」
という「このお客様は金額にシビアだ」という、プランナーのアンコンシャスバイアスにより、
お客様に十分な商品提案ができずにクレームに繋がってしまった事例です。
こうした対応は、お客様に「自分達はお金が無い」と「見下されている」といった不快感を与えるリスクを伴います。
この他にも、お客様の服装や態度に基づいて「この人は買わないだろう」と決めつけ、
サービスの質に差をつけるようなことがあれば、それはホスピタリティ精神に反する行為です。
ホスピタリティの本質は、目の前のお客様に対して自分のあり方に従って、
「そのお客様の喜びや笑顔の為にベストを尽くす」、偏見に基づかない対応をすることにあります。
□ リーダーとしての視点:マネジメントにおけるアンコンシャスバイアス
サービス業のリーダーがアンコンシャスバイアスを克服しない限り、
職場全体にその影響が広がる危険性があります。
特に、以下のようなマネジメント場面でバイアスが問題を引き起こすことがあります。
1.評価とフィードバック
リーダーが部下を評価する際、「こいつは若いからリーダーシップを発揮できないだろう」や
「この人は女性だから交渉には向いていない」など、無意識のバイアスが評価基準に影響することがあります。
このような偏った評価は、従業員のモチベーション低下や離職につながります。
2.役割分担
「男性スタッフは力仕事」「女性スタッフは受付向き」など、性別や外見に基づいた役割分担は、
チームの多様性を損ねるだけでなく、個々の成長機会を奪う結果となります。
ホスピタリティを最大化するには、従業員一人ひとりの強みを見極め、公平な機会を提供することが必要です。
3.チームビルディング
職場内で特定の属性を持つスタッフが疎外感を抱くと、心理的安全性が損なわれます。
例えばアルバイトスタッフが、業務改善に関する画期的な提案を上司にしましたが、
上司は「アルバイトの意見だから」と軽視してしまうケース等がそれにあたります。
これからの時代は、社員、パート、アルバイトを問わずに「集合知」を活かす時代であり、
部下の「主体性なやる気」といった「内発的動機」を引き出すマネジメントが重要な時代です。
リーダーが自身のアンコンシャスバイアスに気づき、それを排除する努力をしない限り、
従業員の主体性や創造性が発揮されることはありません。
□ ホスピタリティ視点でのアンコンシャスバイアスの克服
サービス業におけるリーダーとしての重要な役割は、アンコンシャスバイアスを職場全体から排除し、
顧客にも従業員にも配慮の行き届いた環境を作ることです。
以下の取り組みが、その実現に寄与します。
1.教育と啓発
アンコンシャスバイアスに関する研修や勉強会を通じて、従業員が自分のバイアスに気づく機会を提供します。
事例を交えながら学ぶことで、実際の業務に即した気づきが得られます。
2.オープンなコミュニケーション
職場内で自由に意見を交換できる文化を育むことで、偏見の存在に早く気づき、改善につなげることができます。
リーダー自身が率先して透明性のあるコミュニケーションを実践することが大切です。
3.フィードバックの透明性
従業員の評価や役割分担において、明確で公平な基準を設けることで、バイアスを排除します。
また、評価プロセスを第三者に確認してもらう仕組みを導入するのも有効です。
4.顧客体験の振り返り
お客様からのフィードバックを活用して、サービス提供の中でどのようなバイアスが発生しているかを分析します。
スタッフ間でこれらの情報を共有し、改善策を検討することで、ホスピタリティを高めるチャンスが生まれます。
□ アンコンシャスバイアスのない職場がもたらす未来
アンコンシャスバイアスを克服した職場では、従業員一人ひとりが能力を発揮しやすい環境が整います。
そして顧客対応において、画一的ではない、心のこもったサービスを提供できるようになります。
その結果、従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)が連鎖的に向上し、サービスの質が持続的に高まるのです。
また、多様性を受け入れる職場は、変化の激しい現代社会でも柔軟に対応できる組織として成長を続けます。
ホスピタリティの本質を追求するために、今こそ私たちはアンコンシャスバイアスに正面から向き合い、
それを克服する道を歩むべきです。
アンコンシャスバイアスは誰にでもあるものである、まずはそれを認識することが第一歩です。
そして、顧客サービスにおいては、目の前のお客様に対して、
自分が提供しているサービスが、
「そのお客様にとってベストなのか?」
「お客様がこうされたら嬉しいのではないか?」
という仮説も、自分の思い込みや偏見ではないかという検証をすることが必要です。
そしてリーダーシップにおいても、
「部下の言い分を聞かずに、自分の考えを押し付けていないか?」
「部下の評価も、自分の偏見で評価してないか?」
というアンコンシャスバイアスを意識する習慣づけが重要です。
ザ・ホスピタリティチームでは、アンコンシャスバイアス、接客サービス、リーダーシップに関する研修、
コンサルティングのサービスを提供しておりますので、お気軽にお問合せください。
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