「ホスピタリティ」や「付加価値」という言葉を聞いて、
皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。
「大切なのは分かるけれど、目に見えないもの」
「感覚的で、相手に伝わりにくいもの」
そんな印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
確かに、商品であれば、形やデザイン、サイズ、性能など、その価値の多くを目で見たり、
数字で比較したりすることができます。
しかし、ホスピタリティは目に見えません。
「お客様に喜んでいただきたい」
「相手を大切にしたい」
「期待以上のことをしてあげたい」
そうした想いそのものを見ることはできません。
だから、ホスピタリティや付加価値は「分かりにくいもの」「感覚的なもの」と捉えられがちです。
でも、私はそうは思いません。
ホスピタリティも、付加価値も、「見える化」することができます。
今回は、目に見えないホスピタリティを、どうすればお客様が感じられる「価値」に変えることができるのか。
その「見える化」について考えてみたいと思います。
■ホスピタリティは「感じてもらって」初めて価値になる
例えば、同じコーヒーを提供するとしても、
何も言わずにテーブルに置くのと、
「熱くなっておりますので、お気をつけください」
と一言添えて提供するのとでは、お客様が感じるものは違います。
雨の日に来店されたお客様にタオルを差し出す。
小さなお子様連れのお客様に、頼まれる前に子ども用の椅子を用意する。
いつも利用されるお客様の好みをスタッフ同士で共有しておく。
どれも、商品そのものの機能や性能を変えているわけではありません。
しかし、そこには確かに、
「自分のことを考えてくれた」
「そこまでしてくれた」
「自分を大切にしてくれている」
という価値が生まれています。
つまり、目に見えない「相手を想う気持ち」が、言葉や行動として見えるようになった瞬間、
ホスピタリティは、お客様が感じられる「付加価値」へと変わるのです。
■「想い」があるだけでは、まだホスピタリティは見えない
私たちザ・ホスピタリティチームでは、ホスピタリティを、
「互いの喜びを生み出す、人と人との基本姿勢・行動」
と定義しています。
ここで大切なのが、「姿勢」だけではなく「行動」まで含まれていることです。
どれだけ心の中で、
「お客様に喜んでいただきたい」
「この時間を楽しんでいただきたい」
「困っていることがあれば助けてあげたい」
と思っていたとしても、それだけでは、その想いをお客様が知ることはできません。
つまり、
「想っていること」と「相手に伝わっていること」は違う。
だからこそ必要なのが、目に見えない想いを、お客様が感じられる形に変換することです。
私はこれを、
「ホスピタリティの価値を磨く」
ことだと考えています。
では、どうすれば目に見えないホスピタリティを、お客様に伝わる「見える価値」へと変えることができるのでしょうか。
私は、その方法を4つの「磨き方」に整理しています。
■見えないホスピタリティを「見える価値」に変える4つの磨き方
①「言葉」を磨く ~その人に向けた一言を添える~
最初は、「言葉」です。
例えば、お客様に、
「ありがとうございます」
と伝える。
もちろん、それも大切なことです。
しかし、そこからもう一歩踏み込んで、
「今日は暑い中、お越しいただきありがとうございます」
「お荷物が多いようですが、大丈夫ですか?」
など、目の前のお客様の状況を見たうえで、その人に向けた一言を添える。
すると、定型的な「ありがとうございます」が、
「私のことを見てくれている」
という価値へと変わります。
ホスピタリティのある言葉とは、単に丁寧な言葉ではありません。
相手をよく見て、相手の状況を想像し、その人に必要な言葉を届けること。
そこに、目に見えなかったホスピタリティが「言葉」として見えるようになります。
②「行動」を磨く ~定型型から適応型へ~
二つ目は、「行動」です。
頼まれてから動くのではなく、頼まれる前に動く。
決められたことだけをするのではなく、もう一歩手をかける。
すべてのお客様に同じ対応をするのではなく、目の前のお客様に合わせて対応を変える。
ここに、私たちが研修でもお伝えしている、
「定型型から適応型へ」
という考え方があります。
例えば、ホテルのチェックイン。
すべてのお客様に同じ説明をすることは「定型型」のサービスです。
もちろん、基本となるサービスの品質を保つうえでは、とても大切なことです。
しかし、長旅で疲れているお客様と、初めてホテルを利用されるお客様では、
求めている対応が同じとは限りません。
急いでいる方には説明を簡潔にする。
初めての方には館内について丁寧に説明する。
小さなお子様連れの方には、必要になりそうなものを先に案内する。
「このお客様はいま、何を求めているのだろう?」
と考え、相手に合わせて行動を変える。
そこにホスピタリティが「行動」として見えるようになります。
③「表情・所作・空気感」を磨く ~言葉以上に伝わっているもの~
三つ目は、「表情・所作・空気感」です。
笑顔、声のトーン、目線、姿勢、迎え方、送り方。
実は、こうした部分はホスピタリティが最も瞬間的に伝わるところです。
「いらっしゃいませ」
という同じ言葉でも、
笑顔で相手を見て伝えるのと、
作業をしながら無表情で伝えるのとでは、お客様が受け取る印象はまったく違います。
また、お客様がお帰りになる際も、
「ありがとうございました」
と言った後、すぐに次の作業に戻るのか。
お客様の姿を見ながら、最後まで感謝の気持ちを込めてお見送りするのか。
そこにも大きな違いがあります。
私たちの想いは、言葉だけで伝わっているわけではありません。
表情、声、目線、姿勢、所作、そしてその場に生み出す空気感。
そうしたものすべてを通じて、お客様は、
「歓迎されている」
「大切にされている」
「ここは居心地がいい」
と感じています。
ホスピタリティは、こうした目に見える、感じられる部分にも表れているのです。
④「仕組み・環境」を磨く ~個人のホスピタリティを組織の価値へ~
そして四つ目が、**「仕組み・環境」**です。
ここまでの三つは、一人ひとりのスタッフが実践することができます。
しかし、本当にホスピタリティの高いサービスを提供し続けるためには、個人の「気が利く」「感じがいい」だけに頼ることはできません。
例えば、
あるスタッフが気づいたお客様の好みを、次の担当者にも共有する。
お客様からいただいた声をチームで共有し、サービス改善につなげる。
良いホスピタリティ事例をスタッフ同士で共有し、組織のナレッジにする。
「誰かが気づいたこと」を、その人だけで終わらせない。
こうした仕組みがあれば、一人のスタッフが生み出したホスピタリティを、チーム全体で提供できるようになります。
そして、お客様から見た価値も、
「○○さんは感じがいい」
から、
「このホテルはいつ来ても感じがいい」
「この会社は、私のことを分かってくれている」
へと変わっていきます。
つまり、
個人のホスピタリティを、チームのホスピタリティへ。
そして、組織のホスピタリティへ。
仕組みや環境を磨くことによって、ホスピタリティは個人の力を超え、企業として提供する価値になっていくのです。
■「等価価値」から「付加価値」へ
ここで、もうひとつ大切な考え方があります。
私たちは、サービスの価値を、
「等価価値」と「付加価値」
という言葉でお伝えしています。
お客様がお金を支払い、それに見合った商品やサービスを受け取る。
これは「等価価値」です。
もちろん、まず約束された価値をきちんと提供することがサービスの基本です。
しかし、そこに、
「そこまでしてくれるんだ」
「そんなことまで気づいてくれたんだ」
「自分に合わせてくれたんだ」
という価値が加わったとき、そこに「付加価値」が生まれます。
そして、その付加価値を生み出す大きな源泉のひとつが、ホスピタリティなのです。
特別に高価なものをプレゼントすることだけが付加価値ではありません。
相手を見て、一言を添える。
一歩先に動く。
その人に合わせる。
心を込めて迎え、送り出す。
そして、その情報や気づきをチームで共有する。
つまり、付加価値とは決して「目に見えないもの」ではなく、
ホスピタリティを言葉・行動・表情や所作・仕組みとして表現することで、「見える価値」にすることができるのです。
■AI時代だからこそ、「人が感じる価値」を磨く
AIやテクノロジーの進化によって、これから多くの仕事が効率化されていきます。
正確に答える。
早く処理する。
必要な情報を提供する。
決められた手順通りに対応する。
こうした機能的な価値は、今後ますますテクノロジーが担えるようになるでしょう。
だからこそ、人が提供する価値として重要になるのが、
「自分のことを分かってくれた」
「大切にしてもらえた」
「この人にお願いしたい」
「またここに来たい」
といった、人が人から「感じる価値」ではないでしょうか。
ホスピタリティは目に見えません。
しかし、目に見えないから価値がないのではありません。
目に見えない想いを、相手が感じられる価値に変える。
そこに、AI時代だからこそ、私たち人間がより磨いていくべき価値があると私は考えています。
■ホスピタリティは「あるか」ではなく、「どう伝わっているか」
ここまで、お客様へのホスピタリティを例にお伝えしてきました。
しかし、これは職場でもまったく同じです。
「仲間を大切にしたい」
「部下に成長してほしい」
「一緒に働く人に感謝している」
その想いも、心の中にあるだけでは相手には見えません。
「ありがとう」と言葉にする。
困っている仲間に一歩先に声を掛ける。
相手を見て話を聴く。
お互いを認め合い、助け合える仕組みや環境をつくる。
カスタマー・ホスピタリティと同じように、インナー・ホスピタリティも「見える化」することができます。
そして私は、社員同士のホスピタリティが見える組織だからこそ、お客様にもそのホスピタリティが伝わっていくと考えています。
だからこそ、
ホスピタリティは、「あるか・ないか」ではなく、「相手にどう伝わっているか」。
目に見えない想いを、言葉にする。
行動にする。
表情や所作に表す。
そして、組織の仕組みや環境にしていく。
そうすることで、目に見えないホスピタリティは、
「また来たい」
「この人にお願いしたい」
「この会社を選びたい」
という、相手が実感できる「付加価値」へと変わっていくのです。
■「見えない想い」を「伝わる価値」へ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ザ・ホスピタリティチームでは、目に見えないホスピタリティを、お客様に伝わる「価値」へと変えるための接客・接遇力向上ホスピタリティ研修を実施しています。
単に接客マナーや型を身につけるだけではなく、
「お客様に喜んでいただきたい」という想いを、どう言葉・行動・表情・所作として表現し、付加価値につなげるのか。
ホスピタリティマインドの醸成から、現場での実践までを一貫して学ぶことで、
マニュアル通りの「定型型」の接客から、目の前のお客様に合わせた「適応型」の接客へ。
そして、
求められた価値を提供する「等価価値」から、「そこまでしてくれるんだ」という「付加価値」へ。
お客様から、
「あなたにお願いしたい」
「またここに来たい」
と言っていただける人材、そして組織づくりをサポートしています。
接客・接遇力の向上はもちろん、他社との差別化や、組織としてホスピタリティを高めていきたいとお考えの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
見えない想いを、相手に伝わる価値へ。
「ホスピタリティですべての働く人に喜びと誇りを。」
ザ・ホスピタリティチーム株式会社
代表取締役/ホスピタリティコンサルタント
船坂 光弘