2024.08.03
ホスピタリティコラム
「利己」「利他」「自利」とホスピタリティの関係とは?
私がホスピタリティコンサルタントとして活動する中で意識するのが、
「利己」と「利他」と「自利」の3つの指針です。
この違いは何なのでしょうか?
1.利己(りこ)
利己とは、自分自身の利益や幸福を最優先に考える態度や行動を指します。
他人の利益や幸福を顧みず、自分だけが得をすることを目指します。
利己的な行動は、短期的には自分に利益をもたらすかもしれませんが、長期的には他人との関係性を悪化させたり、
社会全体に対する信頼を損なう可能性があります。
例)
・共同で使うオフィスの備品を独占し、他の人が利用できないようにする。
・自分の意見だけを押し通し、他のメンバーの意見を無視する。
2.利他(りた)
利他とは、他人の利益や幸福を優先して考える態度や行動を指します。
他人を助けること、他人の幸福を増進することに価値を置きます。
利他的な行動は、他人との良好な関係を築き、社会全体の調和を促進することが期待されます。
但し、過度に利他的になると自分自身の健康や精神が疲弊する可能性もあるため、バランスが必要です。
例)
・他の同僚が急な事情で休まなければならない場合、自分の予定を調整してシフトを代わってあげる。
・自分が持っている専門知識やスキルを積極的に他の同僚に教え、チーム全体の能力向上に貢献する。
3.自利(じり)
自利とは、自分自身の利益や幸福を追求する一方で、他人の利益や幸福も考慮する態度や行動を指します。
自利的な行動は、自分と他人の利益を調和させることを目指します。
このアプローチは、相互満足でWin-Winの関係を築き、自分自身も他人も共に成長し、
発展することが可能となるため、持続可能な人間関係や社会の構築に寄与します。
例)
・自分のスキルや知識を活かして顧客満足度を向上させ、自分のキャリアアップにもつなげる。
・社内外の人脈を広げ、自分の仕事に役立つ情報や協力を得ると同時に、他の人にも有益な情報を提供する。
このように、利己、利他、自利にはそれぞれの意味があります。
その上でホスピタリティと照らし合わせた時に、この3つで良く引用されるのが「利他の精神」です。
自分の利益しか考えない「利己」ではなく、相手の事を考え、相手の為に尽くすこと、
これこそが「おもてなしの精神」であり、相手への貢献を意味するホスピタリティの考え方に一番近いというのが一般的な考え方です。
これはこれで尊いことであり、結果的に相手に対して「利他的行動」をすることで、
相手が喜び、「ありがとう」といった感謝の言葉や笑顔が、自分の精神的な報酬となり自分の幸福度の向上にも繋がります。
但し、「利他」の注意点としては、自己犠牲による相手への利他的行動は、自分の心の栄養をすり減らす可能性もあり、
自分自身の疲弊に繋がることもあるということです。
あくまでも、「今、自分のできること+ちょっと背伸び」くらいを目指し、滅私奉公ではなく自主的、主体的に利他的行動することが大切です。
これを続けていれば「ちょっと背伸び」している分、自分の人間的成長に繋がり、自分の利他的行動の範囲が広がっていき、
最終的には相手の喜びといったフィードバックの総和が増え、自分の喜び、しあわせの増幅に繋がります。
そして、もうひとつ忘れてはならいないのが「自利」の存在です。
実は、「ホスピタリティ=利他の精神」と考えられがちですが、
ホスピタリティの定義は「相互満足」が前提条件であることから、利他のように「自分が他者に尽くす」だけでなく、
自分自身の利益や幸福を追求する一方で、他人の利益や幸福も考慮する態度や行動である「自利的行動」のほうが、
ホスピタリティの考え方に近いと私は考えます。
私が「自利」で思い出すのがスポーツ選手です。
現在、パリオリンピックが行われておりますが、一見、オリンピックに出場している選手たちは、
オリンピックに出場すること、金メダルを獲ることを目指し、小さい頃から苦しい練習を積み重ねてきました。
これだけの視点でみると、選手たちは「自分がオリンピックでメダルを獲りたい」という自己実現の為、
自分の利益である「利己」をベースとしているように思えます。
しかし、彼らは決して「利己主義」ではありません。
メダルを獲れた時には「ここまで支えてくださった皆さんのおかげです」
敗れた時には「ここまで支援していただいた方々に申し訳ない」
という言葉が聞かれます。
そうなのです、彼らは自分の為だけに頑張っていないということなのです。
「自分の夢であるオリンピックでメダルを獲ることは、選手の自己実現ではあるけど、
そのことを通じて、今まで支援してくださった方々に恩返しをしたい、そして日本国民の皆さんに勇気と元気を与えたい!」
つまり、自分の利益を追求することで、周りの利益も追及することに繋がっているということなのです。
そう考えると、私たちも「利他の精神」は大切だとは分かっているけど、自分の利益を捨てて他者の為だけに尽くせるかというと、
ハードルが高いのですが、自分の利益を追求することが、周りの利益に繋がるということであれば、
逆に、それが自分の力となり頑張れるのではないでしょうか?
「レストランスタッフであれば、自分がワイン好きでワインの知識を高めることで、お客様にワインの提案力が高まり、お客様により喜んでいただける。」
「自分が英語を話せるようになることで、インバウンドゲストとコミュニケーションが取れて日本に来る外国人に日本を好きになってもらえる。」
「自分の性格の明るさや元気さを活かして、職場を明るくすることで、みんなが楽しく仕事をできる雰囲気を作る。」
皆さまが求める「自利」を追求することで、自分も相手も相互満足が得られてWin-Winになれる。
是非、実践してみてください。
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